5月1日(土) / pm 12:05






「これから1時間休憩、終わったらレギュラーと準レギュはコートに入れ」



解散!という言葉とともに、皆思い思いの場所へ散っていった。
昼食の時間だ。
とりあえず顔でも洗うか、と忍足は水道へ向かうが、どうやら先客がいる模様。



「滝、ジロちゃんは一緒やないんか?」



さりげなく隣をキープ。
滝は顔を洗っている最中だっため声がだせず、こくりとだけうなずいた。
そんな可愛い仕草に笑って、忍足は水道の上に置いてあるタオルを差し出す。



「ありがと。ジローはあっちでのびてるよ。跡部も容赦ないよねー」
「いつも以上に気合はいっとったからなぁ・・・」



跡部の容赦ない攻撃に、それでもわくわくとそれを返し続けるジローというある意味妙な光景を思い出し、二人して苦笑する。
それから手と顔を洗い終えた忍足は、そういえばタオルを持ってくるのを忘れた事に気がついた。
しかたなくユニフォームの裾で拭こうとしたが、頬に柔らかい感触がして隣を振り向く。



「いいよ使って。そんなにこれ汚れてないと思うから」



滝のタオル。
ええんかな・・・これもしかして物凄い抜け駆けとちゃうか?と思ったのは一瞬で、忍足はありがたくそれを使わせて頂くことに。
ふわりと甘い香りがしたようだった。
その間に、そういえばと滝が忍足の顔を見た。



「何か、メガネ外した顔久しぶりに見たかも」
「そか?どや、相変わらずめっちゃ男前やろ?」



にっと笑ってみせると、滝は一瞬きょとんとし、それからじっと忍足を見る。



「・・・え?・・・んー、うん。うん、そうかも」
「・・・・・え」



冗談で言ったつもりが、こうも真面目に返されてしまい忍足はがらにもなく焦ってしまった。
ジローと滝がそういう仲だということは知っているが、もしかして。これはもしかして?
何故かゆっくりと自分のほうに伸ばされる滝の手に、否が応でも忍足の期待は高まっていく。



「・・っ滝」



が、そうそう上手くいくはずもなく。その手は頬には触れず、するっとタオルを引き抜いただけであった。
しかも滝はそれを水に濡らし始める。


・・・・・・・・・・。
俺が使ったもんなんか汚くて洗わずにはおれんっちゅーことか!?



「た、滝、そ・・それ」



がっくりと暗い空気を纏う忍足に首を傾げながら、滝は濡らしたタオルをぎゅっとしぼった。



「ん?濡れタオル、ジローに持ってってあげようと思って。もしかしてまだ使いたかった?」
「・・・・・・・」
「どしたの?」



いや別に、とごまかして忍足はこっそりとため息をつく。
よく考えたら滝がそんなことをするはずがない。
そこに丁度ジローの滝を呼ぶ声が聞こえ、呼ばれた本人は、じゃあねと笑って濡れタオル片手にそちらに向かって行ってしまった。



結局幸せは、みんなジローが攫っていってしまうみたいだ。
その後ろ姿を見ながら、忍足は残念そうに自分の唇に指をのせた。
なぞる口端が自然と上に持ち上がる。



「一応、間接ちゅー、やったんやけどなぁ・・・」



呟きは風の中に消えていく。
柔らかいタオルの感触は、誰にも秘密。





ま、でも。ジローをからかうネタには丁度ええかもしれんけどな。