5月1日(土) / pm 5:30







「あー………」



あるようでないようなことがホントにおこると、こんな声しか出ないみたい。



空はもう真っ赤で、アスファルトには影が長くのびてて。
俺の予定では、帰ったらテレビみてそれから滝にメールして、メシ食って寝るはずだったのに。
今さっき帰って来た道を、何故か俺はまた歩いてる。


でも別に学校に戻るわけじゃなくて。
学校はゴールデンウィークが終わるまでお休み。部活もない。
じゃあ何でって、そんなの実は俺のほうが知りたいんだけど。
あーあ、ってちょっと伸びをして空をみると、夕日がまぶしくて目を細めた。
何で俺、こんな夕日見てるんだろうなぁ。わかんね。



(滝と一緒に見るんだったらサイコーなのに)



はぁってため息がでる。
あ、でもこないだ滝が同じ様に目を細めてたのがすごい可愛かったのを思い出した。
滝はね、まぶしいのがあんま好きじゃないみたいですぐ目をきゅってしちゃうんだ。
可愛いって言ったら、照れてるくせに嬉しくないなんて顔してたのが超可愛かった。


せっかく今日からゴールデンウィークだっていうのに何なのこれ的なトラブルに、かなりへこんでたんだけど、可愛い滝を思い出してちょっと元気になった。
その時ちょうど、滝ん家行くか学校行くかの分かれ道にさしかかって。
タイミングよすぎだよね。

あーダメ。
思い出したら会いたくなっちゃった。
結構あてもなくたらたら歩いてたんだけど、そうと決めたら足取りは羽のように軽くて。



「よっし」



小さく呟いて勢いをつけるために軽くジャンプ。
滝の家まで一直線、俺は自分の影と競争するようにダッシュした。


俺、もともとぼーっとしてるし考えなしなとこ多いけど、今の状況は流石においおいって思うよ。
岳人とか宍戸に言ったらきっと笑われるんだろうけど、実際こうなったらシャレになんねーって。ね。
そういう状態。今の俺。
だから会いたい。



「着いたー」



俺の家とはまったく正反対な、おごそか、って言うの?そういう如何にも日本って感じの滝の家。
さっき、滝を送ってったときここに来たばかりだから何だか変な気分。
でもここに滝がいるってだけで、俺は嬉しくて、さっそくポケットに入ってた携帯で滝を呼び出すことに。
ピンポンは鳴らさないよ。他の家族の人がでちゃったら嫌だもん。
俺は滝にあいたいの。


滝も笑うかな。笑わないよね。滝だもん。
もともと俺のせいでこうなってるわけじゃないし、滝は絶対人をばかにしたりしない。
そーゆーとこ、スゲー好き。


どきどきしながら押しなれた短縮ボタンをピッと押す。
滝はすぐにでてくれた。



『もしもし?』
「もしもし滝?俺ジロー」
『うん、それはわかるけど。何?どうしたの?』
「………」
『ジロー?』


「たすけてたきー。俺もうダメかも」


ホントはわくわくしてるくせに、わざと情けない声だしてみたりして。
今滝がどんな顔してるのか簡単に想像できる。
あの大きな瞳をもっと大きく見開いて固まってる姿を思い浮かべて、聞こえないように小さく笑った。
案の定、滝からの返答は一瞬静かになってその後慌てた感じで、大丈夫!?何かあったの!?って、心配する声が返ってきた。

ね。やっぱ滝だ。



にやにやしちゃう顔を一生懸命耐えつつ、俺はとりあえず、大丈夫とだけ言って滝を落ち着かせる。
それでも滝は心配そうで、電話ごしの優しい声に胸があったかくなった。
俺、超愛されてるCー。



『ねえ、それでどうしたの?今どこにいるの?』



どうしても顔が緩んじゃう。
でもそんなに優しいと甘えちゃうよ滝。滝に甘えるの俺すごく好きだから。
迷惑かけたくないって思うけど、あとはもう滝次第かも。


今、滝ん家の前にいるよって言ったらプツっと電話がきれて、すぐ滝の部屋の窓があいた。
俺は窓から身を乗り出して来た滝にひらひら手を振って、滝ー!と呼ぶ。
俺の元気な様子に滝はほっとしたようだった。



「ジロー、あんまり心配かけないでよ…」
「へへっごめん」
「で、何?どうしたの?」
「俺、帰るとこないんだー」



さらっと言った言葉に、滝が数秒遅れて「は…?」と返してくる。
またまた想像通りの反応が嬉しくて、俺はにっと笑ってみせた。
滝が固まるのもわかるよ。


でもさ。
だって、家誰もいないし、鍵かかってんのに鍵がどこにもないって、正直ありえなくね?
自分ち帰っても中入れないってマジありえないっしょ?