5月1日(土) / pm 6:15






とりあえず、家の中にあがらせてもらって、滝の部屋に案内された。
相変わらずすっきり綺麗にしてて俺の部屋とはおおちがい。

お茶を持って来てくれた滝にお礼を言ってベッドの端に腰をおろし、その横もぽんぽんとたたく。
笑顔の俺に滝はしょうがなさそうに笑って、ちょっと間をあけて隣に座った。
俺はすかさず距離をつめてくっついたけど。
滝は嫌がるふうでもなく(だってそんなのありえない)話の続きをふってきた。



「それで、一緒に持ってっちゃったの?」
「持ってっちゃったの」



俺がここに来たあまりにもな理由に、滝は改めてなんとも言えない表情で苦笑した。
今日からゴールデンウィークってことで、旅行に出かける人も多いだろうけど、俺の両親も部活に行ってた俺を残して楽しく旅行に出かけてしまった。5日までって言ってたっけ。
それは別にいいんだけど。俺がいないあいだの戸締まりもバッチリだったんだけど。



「だって、どこ探してもねーの。いつも郵便受けの下とかにあるのにさー」
「電話は?してみたら?もしかしたらどこか違うところにあるのかもしれないし」
「あー…うちどっちも携帯持ってないんだ。今時めずらCーよね」
「そっか…」



うちの親、結構おっちょこちょいだから、きっと戸締まりしてそのままうっかり鍵もポケットとかカバンの中に…とかそんなオチだと思う。
店のシャッターくらい開いてないかなーと期待したけどやっぱダメだった。
しかもあっちから連絡がないってことは、全然気づいてないんだろうな。
無意識のうちにため息をつくと、俺が落ち込んでると思ったのか滝が優しく頭を撫でてくれる。

どうしようかなぁとは思ってたけど、どうにかなるかと軽くしか考えてなかったし滝に会えたし、そんなに落ち込んではいなかったんだけど…いや、落ち込んでる。滝が優しいから俺落ち込んでることにする。



「たきー」



調子に乗って抱き着いても怒られない。
それをいいことに、しばらく抱き着いていたら滝のいい匂いに何かどきどきしてきてしまった。

ちょっと、やばいデスよこれ…。

そんなこと事とは知らない滝は優しく俺の頭を撫でながら、そうだ、って何か思いついた感じで俺の顔を覗き込んで来た。
その近さに俺はまたどきっとする。



「ご両親が帰ってくるまでうちにる?」
「マジで!?」
「うん」



その嬉しい提案に、俺はガバッと飛び起きて笑顔の滝を見た。


ってことは5日間も滝と一緒!?
うわっやった。鍵なくてよかった!
もちろんゴールデンウィーク中には滝と遊ぼうって決めてたけど、お泊まりはまた別っしょ。
しかも、さっき聞いたら滝の親も旅行中でいないらしい。
ゴールデンウィークばんざい!
後でみんなにメールして自慢しよっと。



「だってジローって、このまま俺が追い出したら平気で野宿とかしそうだもん」
「そうだけどー…でも、滝はそんなことしないよ」



そう言うと、滝はそうだねって笑ってくれた。
それわかってて来たとかそういう部分もあるにはあるけど、俺だからいいよね。
嬉しくて、ぎゅっと滝の腰に抱き着いた。



「じゃあさ、いっぱいえっちできるね」
「……っ!」



こういう事いうと滝はすぐ真っ赤になるんだ。超可愛いし。
同時に後ろに突き飛ばされたけど、俺はこりずにまた細い腰に抱き着く。
でもまたすぐに突き飛ばされそうになって、しょうがなくぱっと手を離した。



「そういうことするんだったら、もう泊めてあげないよ!」
「えーダメダメ!いーじゃんしようよ」
「したらもう膝枕してあげない」


眉根を寄せた顔で滝はそっぽを向いてしまった。
うっ。それはやだ…。
じゃあ我慢する、としぶしぶ俺は滝に誓う。

でもでも、せっかくのお泊まりでしかも二人きりなのに。
常にそういうことしたいとか思ってるわけじゃないけど…あーうん、嘘。実は思ってる。だって好きな子と一緒にいて我慢出来るほど大人じゃないよ、俺。
そうやってぶつぶつ言ってると、滝が一つため息をついて、またいつものしょうがないなって顔してくれた。



「5日だけなら許してあげる…誕生日だし、ね」
「…マジ!?うれCー!」
「ちょっジロー…うわっ!」



抱き着く勢いがあまって、そのまま二人で後ろに倒れ込んでしまう。
最後にはいつも滝は「いいよ」って言ってくれるんだ。
自分より相手を大切にしちゃうところ、凄く好きだと思う。
いいよ、が嫌々じゃないかどうかは俺の見極めどころね。



「たき」



ぎゅっと抱き締めると、抵抗していた体が大人しくなって、余計な力もすっと抜けていった。
ちょっとだけ上体を起こして滝を見ると、顔はまだ赤くて、さらさらの髪が綺麗にベッドに散ってて。
これにドキドキしない奴はおかしーね。


俺たち以外いない家は妙に静かで、しゃべらないでいるとそれを益々意識してしまう。
何か急にそわそわしてきちゃって、あーとかうーとか唸ってる俺を見て滝が声を殺して笑ってた。
むーっとして、その笑いをおさめるように俺は滝のおでこにちゅっとキス、それからこつんとそこに自分のおでこをくっつけた。


抱き合うのは初めてじゃないけど。
でも、いつもと違うじゃん?



「…てれますネ」
「そうですね」



恥ずかしそうに二人で笑う声だけが、静かな部屋に小さく響いてた。







こんなわくわくなゴールデンウィークって、初めてかも