5月1日(土) / am 9:00






ゴールデンウィークといえど、ここ氷帝学園テニス部は容赦が無い。
今日も朝から夕方までテニス三昧の予定です。



「あーあ折角の連休だってのに部活なんてありえねーよなー侑士」
「そやなぁ」
「明日も明後日もその次も部活だぜ?ありえねー!」
「ありえんなぁ」



ストレッチの最中に、となりでぴょんぴょん飛び跳ねて騒ぐ相方へ、忍足は適当に相槌をうっていた。
ただでさえ目立つというのにおまけに大声なもんだから、さっきから跡部がこちらを睨んでいる。
怒鳴られる前にと忍足は口を開きかけたが、ふとあることに気がついた。
いつもならここで、自分より先にこのうるさいオカッパを大人しくさせる滝がいない。



「なあ岳人、滝って」
「まだ来てねーよ。あー萩之介いないとつまんねー!!」



皆まで言わせず一切高く飛び上がって一回転。
いつもなら周りは呆れて見てみぬふりだが、滝がいないということにざわめき始める。
滝は氷帝テニス部の華なのだ。
優しくて綺麗で面倒見のいい彼を、学年関係なく皆が皆慕っていた。


跡部だって例外ではなかったが、騒ぐ部員をほっとくような部長ではない。



「ったくそれくらいで騒いでんじゃねーよお前ら!全員グラウンド20周してこ・・・」



部長の叱責に、3年レギュラー(他一部)以外がビクついたその時、カシャンっとコートのドアが開く音が。



「ごめん跡部。遅れちゃった」
「萩之介ーーー!!!」



現れたのは天使・・もとい滝。
すかさず岳人は文字通り滝に飛びついた。
その後も部員がわらわらと入口に集まっていくがそれは跡部が制し、滝に問い掛ける。



「お前が遅刻なんて珍しいな。何かあったか?」
「俺らが遅刻したら問答無用で校庭走らされるのになぁ、岳人?ほんま跡部は滝には甘いわぁ」
「甘いわぁ」
「うるせぇよバカコンビ」



とりあえず横からちゃちゃを入れる忍岳コンビに睨みをきかせ、跡部は苦笑する滝に向き直る。
と、その後ろから見覚えのあるくるくる頭の端っこが覗いているのに気がついた。



「ジローじゃねえか」



さも珍しいものを見たというような顔で、跡部は滝の背中に頭をくっつけて立ったまま寝ているジローを見やった。
ジローは休みの日は大抵部活にこない。
それでも跡部や果ては監督まで何も言わない上に結果も出しているため、それは当たり前のことになっていた。


滝は予想通りの皆の反応に微笑み、遅刻の理由を説明する。



「ジローを迎えに行ってたら遅くなっちゃって・・・ほら、ジロー起きて。着いたよ」
「・・・・ん〜・・・わかったぁ・・・。あ〜、跡部だ・・おはよう〜」



なるほど、滝に迎えにきてもらえたらどんなに眠くても面倒くさくても行かないわけがない。
特にジローなら。普段はどんなに起こしても起きないが、滝の声なら一発で目が覚めるのだ。
今のがそのいい証拠。


滝はそろそろ離れて欲しげだったが、まだぽやんとしているジローはいつまでも背中にはりついて離れない。
同じように横から滝にはりついていた岳人は、先ほど忍足によって剥がされていた。
簡単に抱きつけて、うらやましい。と、その場の全員が思ったことは間違い無い。



「聞いて跡部ー。滝、ちょー優しいの。モーニングコールもしてくれたC〜、うちまで来て起こしてくれたC〜」



それモーニングコール意味ないやん、とはだれもツッこまない。(ただし忍足だけはツッこんだ)
話すうちにだんだん目が覚めてきたのか、緩んだ顔でジローは得意げに自慢する。
着替えを手伝ってくれたーとか、手を繋いで(ひっぱってきて)くれたーとか。
それにいちいち照れてジローの口を塞ごうとする滝のなんと可愛らしいことか。
うらやましい。と、その場の全員が(以下略)



ただ、岳人だけは思うだけでなく、思いっきり口にだしてうらやましいと騒ぎ出した。



「何だよそれ!萩之介、オレには!?何でオレは迎えに来てくれないの!?」
「だって岳人はいつも忍足と行くから・・・」
「いーよあいつなんか。侑士なんか全然気にしなくていいのに!」



酷いわ、がっくん・・・!忍足が大げさに傷ついてみせたがそんなことはいつもの事なので誰も気にしないことに更に傷つく忍足。
滝だけがそれを気の毒そうに見ていた。
が、滝は基本的には岳人のお願いには弱いのだ。
じゃあ今度迎えに・・・と言いかけるが、それを遮るようにジローが後ろから思いっきり滝を抱き締める。



「ダメ!滝は俺しか迎えに行っちゃダメなの!」
「は?ずりーぞジロー!萩之介はお前のもんじゃねーっての!」
「俺のじゃんっ」
「萩之介はお前なんかと会うずっと前からオレのですー」
「ちょ、ちょっとジロー、岳人・・・」



だんだんと収拾がつかなくなってきたジローと岳人の言い合いに、滝は助けを求めるように跡部を見た。
まったく部活にならない騒ぎに彼も相当キているようで、とうとう怒りはMAXに。



「・・・・・全員外周30周!!」
「「えーーーーーーーー!!」」



主に原因となった二人が一番嫌そうに声を上げた。
が、跡部部長の言う事は絶対、が鉄則なテニス部である。
どんなに反抗しようがレギュラーも例外ではない。



「おいジロー走り終わったらコートに入れ。今日はこの俺様が相手になってやる」
「マジで!!?やったーー行ってきまーす!!!」



跡部のしごきは半端ではないのだが、ジローは目を輝かせ飛ぶようにコートから出て行った。
ジローにとっては罰になっていないらしい。
そんなジローの現金さに笑いながら、滝も後に続こうとしたが跡部がそれを引き止める。



「あぁ、滝と、あと樺地はいい」
「え、いいよ跡部。遅刻したんだし俺も走るよ」
「あーん?あのジローを連れてきた礼だよ。樺地はあいつらが帰ってくるまで俺様の相手をしろ」
「ウス」



跡部のお気に入りになるとこうも扱いが違うらしい。
何か釈然としないものを抱えながらしぶしぶ皆コートをでていくが。



「えっと、みんなごめんね・・・?」







い い え ・ ・ ・ ! ! !



申し訳なさそうに顔の前で手のひらを合わせ、上目遣いで謝る彼の姿をみて許さない奴がいようか。
いやいない。
しかもコート付近を通るたびに滝から声援がおくられ、やる気溢れる外周になったとか。
しかし、当然一番のりしたジローには滝が甲斐甲斐しくタオルとドリンクを持って駆け寄ったりして。
うらやましい。と、その場の全員が(以下略)




ゴールデンウィークは、まだまだこれから。