5月2日(日) / am 10:05






ふわふわ漂ってきた甘い匂いで目が覚めた。
見慣れない景色に一瞬首を傾げたけど、そういえばココ滝ん家だっけ。
ボーっとしながら、きょろきょろ探して時計を見ると10時ちょっとすぎ。俺にしては早いかな。



「あれ?滝〜…?」



隣で寝てたはずの滝がいなくて、呼んでみたけど返事がない。
甘い匂いがするし、台所で何か作ってくれてるのかも。


でさ。そう。一緒にね、一緒に滝のベッドで寝たんデスよ。そりゃもう忍耐の一晩。
絶対なにもしないからって約束で許してもらえたんだけど、滝の寝顔がマジで超可愛くて!
いい匂いするしあったかいし、俺はそれに耐えてる間に疲れて眠っちゃった感じ。


それにしてもホント昨日はヤバかった。
耐えて頑張ったってのもあるけど、寝ぼけて俺に擦りよってくる滝って可愛すぎてホントヤバイよ。
そんな滝の可愛い寝顔を思い出すだけで、気分はもう幸せ。
だいたいいつも俺は寝てるから、そういう滝を見れるのは珍しい。
あ、でも皆は見なくていいよ。見ていいの俺だけだし。



(そうだ!みんなに自慢しよ〜)



幸せのおすそわけ〜って、ベッドの脇に置いてあった携帯を引き寄せてメールをうつ。
岳人とか絶対うらやましがりそう。
5日も滝とずっと一緒なんてうらやましいよねぇ。へへっ。
滝ん家にいるって証拠に何か欲しいなーと思ってたら、コンコンと扉をノックする音がした。



「ジロー起きてる?ホットケーキが焼けたんだけど…」
「おはよー滝」



ナイスタイミング!という具合に携帯を滝に向けて一枚カシャっと撮影。
それをメールに添付して送信ボタンを押して携帯を閉じ、首をかしげてる滝ににこっと笑う。
いつものイタズラだと思ったのか特に気にした風もなく、ジローが1人で起きるなんて珍しいね、と笑いながら滝は窓のところまで行って、まだ閉めたままだったカーテンを開けた。
一気に部屋が明るくなって、眩しくて目を細める。
同じようにして目を細めてる滝は、窓から入って来る太陽の光を浴びてきらきらしてた。


うん、今日も綺麗。
エプロン姿も似合ってて、何か新妻さんみたいだ。

可愛いなぁってぼーと見てた俺が、まだ完全に目が覚めてないと思ったのか、滝が目の前まできてひらひら手をかざした。



「ジロー?まだ寝てるの?」
「んーん!それより俺お腹すいた!」
「ホットケーキ食べる?バターとはちみつたっぷりのやつ」
「滝が作ったもんならなんでもいいよ。なんでも好き」



もちろんホットケーキも大歓迎。
そう言うと、滝はちょっと照れたようにお礼を言って、寝癖を直すように優しく頭を撫でてくれた。
ふわっと甘い匂い。
いつも滝からは甘くていい匂いがするんだけど、今日は一段と甘い匂いがする。
優しい手の感触といい匂いにすごく滝にくっつきたくなった。
このままくっついたらあの約束守れる自信ないなーなんて思いつつもやっぱり本能には勝てなくて、滝の背中に手をまわそうとしたら、思いっきり後ずさられてしまった。


しばらく二人の間に妙な沈黙が流れる。
この中途半端にのばされた俺の手をどうしろと……?



「うー滝〜…?」
「あっ!ご、ごめんねジロー、でもはちみつついちゃいそうだったから…」
「はちみつ?」



見れば、エプロンの下の方に何かこぼした跡があった。
いつもより甘い匂いがした原因はこれか。



「後で洗濯するから一緒にすればいいやと思って、そのままにしちゃったんだ。つかなかった?大丈夫?」
「平気。俺甘いの好きだしー」
「…そういう問題かなぁ」
「おいしそうだね」



え?っていう顔の滝に微笑んで、髪を撫でてくれていた手とは反対の手を引き寄せた。
安心させるように笑ってから、テニスをやってるとは思えないような綺麗な指先にちゅっとキスをして、その人さし指を口に含む。
滝は咄嗟に引っ込めようとするけど、それを止めるように、舌で爪の間をペロっと舐めた。



「っジロー…」
「何?」



指を口に含んだまま上目遣いで困惑してる滝を見る。
朝からすごく、変な気分。
やばいなーと思って、もう一回ペロッと舐めて滝の指を解放した。
名残惜しい。



「甘いね、滝の指」
「え…?あ、うん、はちみつこぼしたときについたのかも…」
「気持ち良かった?」
「…………っ!」



真っ赤な顔を隠すように滝がばっとそっぽを向く。…気持ち良かったんだ。
変な気分になってたのが俺だけじゃないって、かなり嬉しいし。
もちろん俺はそれを隠す事なんかできなくて。照れ屋の滝と違ってね、俺は結構オープンなの。
だから、さっき拒否られたことも忘れて滝にぎゅっと抱き着いた。
今着てるの滝に借りた服なんだけど…後で洗濯するって言ってたから、ま、いっか。


滝はびっくりして、俺を引き剥がそうとしてたけど、そんなの無理。
離せるわけないじゃん。
なんでそんなに可愛いの。



「離れなきゃだめだよジロー、服よごれちゃう」
「もう汚れてるし」
「でも…」



いいから、と言うように滝のさらさらの髪をかきあげて、おでことまぶたに唇を落とす。
滝はこういう優しいキスが好きで、してあげるとすぐ大人しくなっちゃう。
頬を優しく撫でて、目を合わせると、長いまつげと綺麗な瞳にどきどきした。
頬を撫でていた手を横に滑らせ、柔らかい唇に触れても滝は抵抗しなかった。



「口も甘い?」
「…はちみつ…舐めたから…」



滝の唇はいつだって甘いんだけど。
恥ずかしそうに俯く顔をそっと上に向けさせて、目をつむって顔を近付けて行く。
おはようのちゅうもまだだったし、ちょうどEーね。
しかし、ちゅうまであと5ミリってとこで、滝の携帯の着メロが鳴り響いた。



タイミング悪すぎるし…!!



せっかくラブラブな雰囲気だったのに、きっと邪魔したのは岳人だ。
俺が送ったメールを見て、滝にホントかどうか確かめるために電話してきたに違いない。
メールなんかしなきゃよかった…。


でも滝は何故か電話にでない。
何でだろうと、俺のほうが携帯を気にしてると、くいっとシャツの裾をひっぱられる。
凄い可愛い顔で見つめられちゃってるんですけど、俺。



「…いいの?」



目だけで携帯のほうを伺うけど滝はコクリとうなずくだけ。
ってか俺も、その気になってるくせに、今さらいいのもなにもないんだけど。
とりあえず、うるさい携帯の電源はオフ。念のため俺のもオフにしておく。



「ジロー」



目を閉じて待つ滝の唇に、俺は喜んでくちづけを贈りました。



初日からこんなんで俺、もつのかな。
でも滝と離れるなんて嫌だから、5日までどうかもって俺の理性!