今日は人生において足りないモノの話をしよう。




ビタミンとミネラル。




夏の午後。暑い空気の執務室にはもう慣れてしまった。
中庭では蝉玉くんと土公孫のおいかけっこが繰り広げられているが、室内はシンッとして。
僕たちはいつものように仕事の真っ最中。
窓を開け太乙様特製の扇風機を持ち込んだおかげで、いくらか涼しい風が肌を撫でる。
そしていつものように飽きることなく、正面で珍しく執務に励んでいる師叔を盗み見ていた。

「のう楊ぜん、この件なのだが・・・・」
「あぁ、これは・・・」

たまにされる質問に答えてはまた師叔を見つめる。
朱い髪が風に揺れ、光に透けて綺麗。
瞳も頬も唇も・・・・ん?

「師叔、唇ちょっとみせてください」
「え?っわ・・・」

声に反応し師叔が顔を上げるのより早く、小さな顎をくいっと持ち上げる。
今までそんなに気にしていなかったが師叔の唇はがさがさになっていた。
イキナリの行動に何か言いたげな荒れた唇を指でそっとなぞる。
ここには二人以外誰もいないから。
そういうときの師叔は意外と大人しい。

「ねえ師叔。仕事はやめて、今日は人生において足りないモノの話をしましょうか」
「はぁ?足りないモノ?」
「何だと思います?」

しばらく不信そうにこちらを見ていた師叔だったが、笑顔を崩さない僕に諦めたよう。
でもちょっと興味があったのか、フムと一言呟いて師叔は真剣に考えだした。
僕はこのムム・・・っと小さく考え込む真剣な表情の師叔が好きだった。
実年齢なんかよりずっと幼く見えて、可愛くてたまらない。
やがて師叔が何だか頬を染めて、おずおずとこちらを見上げてきたので首をかしげて答えを促せば。

「・・・・・・愛?」

思ってもみなかった答えに思わず笑うと、師叔が真っ赤な顔で拗ねてしまった。

「わ・・わしだって愛とかちゃんとわかっておるのだっ。見かけはこんなだが子供ではない!」
「はいはいゴメンナサイ・・・でもハズレです。答えは栄養」

まぁ身体は子供じゃないな、なんて思いながら再び師叔の唇をつつく。
師叔も気づいたようで自分のがさがさな唇にそっと触れた。
その途端師叔の顔がぱっと染まったのが気になったが、話を進める。

「ビタミン不足ですよ。好き嫌いしないでちゃんと野菜も食べなきゃ駄目っていったでしょう?桃ばっかり食べて・・・」
「だからわしは子供ではないー!そ、それにこれは・・・・」
「これは?」
「・・・・」
「師叔?」
「・・・・・・・お主がいっつもわしの口に吸い付くからじゃっ///だからわしの栄養は全部お主にとられてしまっているのだ!」



これだから師叔をやめられない。



可愛すぎる発言に、僕は師叔の『栄養』をとるため唇にちゅっとキスをし、荒れた唇を潤した。
軽いキスに、もう終わり・・・?と名残惜しく見つめてくる無意識な瞳に微笑んで。

「僕がビタミンなら、師叔はミネラルですね」
「?どういうことだ?」
「さあ?どういうことでしょうね」

納得いかないように、こくっと首を傾げた師叔の髪が風に揺れる。
ふっと微笑みそれを梳いて、今度は望み通り深い深いキスで唇を濡らしていった。





---------それはなくてはならないモノ。





 

チャコフィルラジオ「カリスマファイト」の合間に流れるラジオCMネタ。
もとになったCMが面白いんですよ。↓

「今日は人生において足りないモノの話をしよう」
「・・・・愛?」
「いや、栄養だ。僕がビタミンなら君はミネラルだ」
「どういうこと・・・・?」
「わからない。」

このCM大好きです・・・・(笑)