僕の王さまはとってもしょうがない人なのです。




僕の王さま至上主義。




朝ねぼうの好きな王さまなんです。



「師叔、起きてください。朝ですよ?」
「んー・・・」
「師叔ってば、ほらっ起きて」
「にゅー・・・やなのだぁ〜あと5分・・・」

はがしたはずのシーツをぎゅっと手繰り寄せて、いやいやと丸まってしまいます。
大好きな王さまのお願いならなんでも叶えてあげたい楊ぜんでしたが、朝議に遅れて怒られるのは王さまなのです。
無理やりにでも起こそうとすると、王さまは目を瞑ったままこう言いました。

「今日はちょっと身体がだるいのだ。風邪かもしれぬのぅ・・・だから」

朝起きるのがいやで、病気になったフリをしました。
勿論これは起きないための口実。ウソをついたのです。
けれど楊ぜんは本気にしてしまい、すぐにお医者さんを呼びました。
そうして本当の注射をしようとしました。

「のわっ!や、やめいっ!わしは元気じゃから、ほれ起きたぞっ」
「おはようございます師叔」

王さまは注射が大きらい。
注射をされるくらいなら起きたほうがいいと思いました。
そんな王さまを見ている楊ぜんはイタズラが上手くいったようなにこにこ顔。
王さまは不機嫌そうに楊ぜんを睨み付けます。

「お主・・・・」
「あ、師叔寝癖ついちゃってますね。直して上げますからこっち来てください」
「〜〜っ・・・・・着替えもやってくれたら行く」
「はいはい」

朝だけは、いつも素直じゃない王さまも甘え放題です。
いえ、いつだって楊ぜんにだけはこれでもか、というほどの甘えっぷりなのです。





朝の会議も終わって、やっと朝食の時間です。



「ふう〜やっと朝ご飯か」
「今日はピーマンのサラダと杏仁豆腐ですね」
「・・・・ぴーまん・・・」

王さまはピーマンが大きらい。
横目でちらっと、ピーマンのサラダを食べている楊ぜんを覗き見ます。

「よーぜん」
「駄目ですよ師叔、好き嫌いしちゃ」
「ようぜん、はいっあーん」

王さまはどうすれば自分の我が侭がとおるのかよぅく知っていました。
案の定楊ぜんは、しょうがないですね・・・と言いながらもどこか嬉しそう。
あーんと口を開けて、王さまにピーマンのサラダを食べさせて貰いました。
そしてお返しに、杏仁豆腐は楊ぜんが食べさせてあげます。

すこし恥ずかしがった王さまでしたが、楊ぜんのぶんもくれたので喜んで食べさせて貰いました。
早く、と言って食べさせて貰うのを待っている王さまの可愛さに、楊ぜんはとても上機嫌です。
まわりが目のやり場に困っていることなんて、ちっとも気にしていないのです。




「俺たち仕事中ずっとこいつらと一緒なのかよ・・・・」
「耐えるんです小兄様・・・」






ダラダラが好きな王さまなんです。



楊ぜんは、少しでも王さまの負担が軽くなるよう、さりげなく仕事を肩代わりしています。
王さまもそのことを知っていました。
優しい楊ぜんに微笑む王さま、そんな笑顔に楊ぜんも微笑み返します。

「あーもうやってらんねぇ!俺は休憩する!あとの仕事は頼ん・・・イテッ!!」
「何処へ行こうというのですか武王?」

絶対零度のにっこり笑顔で手加減なく書簡を投げつけてきた相手に、武王はしぶしぶ席に戻りました。
すると今度は王さまが。

「疲れたのう・・・・桃がくいたいのう〜」
「そろそろ休憩にしますか師叔?」
「・・・おい!?」
「何ですか武王」
「どうして太公望はよくて俺はだめなんだよ!」
「師叔はあなたなんかより何倍も頑張ってますからいいんです」

結局は、この可愛い王さまに甘いだけなのです。
武王は脱力して、周公旦は我関せずを貫いてます。
貰った桃を嬉しそうに食べている王さまを楊ぜんは優しく見つめました。

「のう楊ぜん、仕事は明日にまわして今から街にでも出かけぬか?」
「どうせその仕事、明日僕に全部押しつける気でしょう?」
「う・・ま、まぁよいではないか。のう行かぬか?楊ぜん」
「師叔のおねだりなら断れませんね。と、言うわけなので後宜しく頼みます」
「・・・・・・勝手にしてください」

仲良く部屋を後にした二人に、残された兄弟は同時に深い溜息をつきました。
しょうがない王さまなのです。
そして・・・・






「のう、お主はどうしてなんでもわしの願いを叶えてくれるのだ?」

先程楊ぜんにたくさん買って貰った桃まんを頬張りながら王さまが質問します。
王さまの可愛い質問に楊ぜんは柔らかく微笑みました。
さすがの王さまもどきっとします。

「師叔は僕の王さまですからね。王子は王さまには逆らえないのですよ」
「王さま?何だそれは」
「お姫様のほうが良かったですか?」
「・・・・・・お主の言っとることはよう分からぬ」

眉を顰める王さまを楊ぜんは優しく優しく見つめます。



王さまは絶対的な存在。



王さまだけに甘い甘い専属の王子さまも、やっぱりしょうがない人なのです。

 

 

意味のないラブラブが書きたくて・・・
でもこの師叔って
王さまというよりお姫様というより女王様でしょう(笑)
んで楊ぜんは王子っていうよりやっぱり犬。