街のはずれの古ぼけた このろじうらで 後悔はしないけど。でもそれを諦めてはいるけれど。 好きになったのは仕方がないのだ。あやつが悪い。 「別に」 さっきから自分はじっと頭一つ分高い位置にある相手の顔を見つめていたらしい。 楊ぜんが窓辺から身を乗り出し不思議そうにこちらを覗き込んできて。 パッと顔を逸らす。近すぎたからだ。 でもさすがにこれじゃあ態度が悪すぎるので、急いで話題を転換する。 「お、お主またその花ここに飾るのか?」 その花、と言って彼の手の中にある花に目を向けた。 すでに窓辺にはいくつもの花があるが、また増やすのか?っと。 楊ぜんはああ、と呟きその花をこちらに渡しながら笑った。 「これはあなたにあげようと思って。いつも僕の話相手になってくれてるお礼です」 彼の瞳の色の綺麗なスミレの花だった。 「別にお主の話し相手になりにここに来ておるわけではないぞ。学校の帰り道なのだ!」 どうも嬉しさを隠せていないらしい。 言葉に反してスミレを彼に返すことなどしなかった。 「こんな路地裏が、ですか?」 「ち、近道なのだ!」 そんな自分に楊ぜんは更に笑う。綺麗に、あわく。 その笑顔が好きだった。 あの日何となく通りかかった路地裏にお主がいたから。 丁度良いくらいの日が当たるのは家と家との間隔が広いからだろう。 街のはずれにあるここは、綺麗な石畳の路地で不思議な空気に包まれて。 まだ通ったことのなかった道に興味が湧いたのだ。 周りを見渡しながらちょっと歩いて。 ふいに窓辺にみえた蒼い髪。花で彩った窓辺。 単純に綺麗だ、と思って見ていたら蒼い髪の男がこっちに気が付き。 『花、お好きなんですか?』 花以上に美しい彼の容姿に、思わずみとれていたのだが、それは花になのだと思われたらしい。 なんにしろ。 そう言って笑った楊ぜんに不覚にも、だ。 わしのココロはまっすぐに奴のほうへと傾きだしてしまった。 あの日から毎日ここに来ている。 ここで立ち止まって話をするのは花が好きだからだ、と誤魔化して。 「むー・・・・良いのか?」 「家の中にも花はたくさんありますし、お茶とお菓子用意して待ってますから」 ね?っと言われて自分が断れるはずがない。 嬉しいくせにわざと曖昧に頷いてみせて、じゃあ明日と言葉を交わして楊ぜんと別れた。 路地裏を通り抜け広い道に出た。 途端、顔が緩みだす。 はなうたまじりに、明日の約束を何度も何度もココロの中で反芻して。 楊ぜんにもらったスミレを眺め、また口元が緩む。 ほらこんなのは自分じゃない。 こんなことぐらいで舞い上がるなんて少女じゃあるまいし。 あやつが悪いのだ。 いつもの路地裏へと続く道ではなく、表通りを歩く。 ついでに途中にあった花屋であやつが好みそうな花を買う。 笑った顔が見たいからだ、なんて考えてる自分は相当重傷のよう。 「ぬおっ!もうこんな時間!?」 花選びに以外に時間がかかってしまった。 いつも楊ぜんと会っている時間はとっくに過ぎていて、慌てて駆け出した。 遅い自分を心配して表で待っていてくれてるのだろうか。 「師叔!いつもの時間にいらっしゃらないから心配しましたよ」 「楊ぜんーすまん!ちょっと買い物してて・・・」 ほらこれ、と先程買った花を差し出す。 「花・・・」 「家に招待されたのだ。手土産だよ」 適当に言い訳して、照れ隠しのようにそれを楊ぜんに押しやる。 そして、彼は。有り難う御座いますと。 あの路地裏で見せる綺麗な笑顔で、嬉しそうに笑った。 「・・・っ」 顔が赤くなっていくのがわかる。 こんなことぐらいで、なのに止まらない。 気付かれまいと俯くが、ふいに頬が大きな手で包み込まれて。 赤い顔を覗き込んできたのはやっぱり彼の笑顔だった。 青いお空にてらされた きれいなひとみが優しく笑った もう誰だって止められないよ |
結局両想いになったのでしょうか・・?
書けばかくほど曲のイメージから遠ざかっていきました。泣。
謎のss・・・どこが謎なのかも謎なss・・・