さあ、宝探しをしよう。




マインスイーパ




ちっちっちっちっ・・・・・
時計の針はだれにも見られることなく次の日付へと時を刻んでいく。
この部屋にいるのは2人。
片割れは時間のことなど興味は無かったし、1人はもうそれどころではない。
それどころではない1人・・・太公望はノートパソコンの画面を睨みつけながら
せわしなくマウスを動かしている。
動いているプログラムはマインスイーパ。
灰色の無機質な長方形の中から数字をヒントに地雷を探していく。
太公望はこのごろそのゲームにどっぷりとはまり、暇があれば数字と格闘している。
そのせいで彼の目は充血し、頭の中は数字だらけ。
今では寝ようと目をつぶれば灰色の長方形が浮かんでくる始末だ。
そんな彼の姿を後ろから見つめているのは楊ゼン。
楊ゼンは暇を持て余していた。
太公望はゲームに夢中で構ってくれないし、テレビをつけようものならうるさいとマウスパッドを投げつけられる。手元の推理小説は半分ほどで犯人がわかってしまった。
しかし楊ゼンはそれはそれで楽しんでいた。
画面を睨みつける真剣な顔、うまくいって微妙に微笑む口元、間違って地雷を踏んで驚く瞳。それらの表情がくるくると不規則に変わっていき飽きることが無い。
「だ―――――――!!!」
ほら、今度は叫びだした。
「どうしたんですか、師叔?」
くしゃくしゃと髪をかき乱す太公望の姿に笑いを堪えながら楊ゼンは画面を覗き込む。
地雷の数:13/99
「せっかくここまで減らしたのにうっかり手が滑って隣のブロックを押してしま
ったのだっ!もう少しだったのにっ(泣)!!」
本気で悔しそうに拳を握り締める太公望はあまりにも可愛くて、
「ぷっ。」
思わず楊ゼンは吹き出してしまった。
それを耳聡く聞きつけた太公望はくっくっと肩を震わせる楊ゼンを睨みつける。
「そんなに笑わなくてもいいではないか。」
「あ、すいません。」
太公望の不機嫌そうな口調に慌てて楊ゼンは笑いを止めた。
「そんな長い時間やっていると集中力が切れてしまいますよ?
たまには休憩しないと変なミスしますから。」
「むー。そんなこと言われても気がついたらこれをやっておるのだ。」
どうやら太公望にとってコレは麻薬のようなもののようだ。
「それに適当に違うこともしておるよ?ホームページ見たりとか。」
確かにパソコンの画面は別窓でHPを開いている。
「でもそれじゃ目にも悪いですし、休憩になっていませんから。
たまに遠くを見ないと・・・・ほら。」
楊ゼンは少し涙のにじんだ太公望の目元を親指で拭ってやる。
「少し充血していますよ。これ以上目が悪くなったら眼鏡かコンタクトしなきゃ
いけなくなっちゃうじゃないですか。」
嫌でしょう?と楊ゼンは太公望をやんわりと嗜める。
その言葉に太公望は眉をむっとひそめる。
「しかし、終わらないとわしの気がすまないのだ。あともう少しだし・・・・。」
「じゃあ早く終わるように僕も微力ながらお手伝いしましょうか。」
渋る太公望の言葉を遮った楊ゼンはにっこり笑っていきなり、
「ぬおっ!?」
太公望の座っていた椅子の余っていたスペースに回り込んで座りだした。
太公望は少々椅子に浅く座る癖があるため、彼の後ろに座ることなど容易いこと
だった。
「さ、やっちゃいましょうかvv」
自然と太公望の体を抱きこんだ形になり、楊ゼンはご機嫌で画面の新規を促す。
「ううう・・・・なんだか落ち着かないのう・・・・(汗)」
太公望はもぞもぞと居心地悪げに体を動かし、上の丸顔を押した。





静かな部屋にかちかちとマウスをクリックする音が響く。
楊ゼンと太公望が合体(?)してから20分弱。
始めのうちは楊ゼンが太公望の体に意図的にまさぐって太公望に怒られたり、うっかり太公望が楊ゼンが言った所の隣のブロックを押して自爆し、ぎゃーと叫んだりと
なかなか賑やかだったのだが、時間が経つにつれ2人とも無口になっていく。
「・・・・・どーしましょう、コレ。」
「あ・・・・開けようがない・・・・(汗)」
・・・・同時にぼそりと漏らされた泣き言。
灰色の四角の中はある程度開かれていたのだが、いかんせん地雷の配置場所が悪い。
もちろん中央にもちらほらと地雷はあるのだが、数字を頼りにして処理していっ
た結果、地雷は見事縦二列に並び、未開拓地を切り開いて行くことが出来ないのだ。
地雷数は27個/99個。
先ほどの太公望の数まではいかないが、ここまで持っていくのにも手間がかかる。
「これはもう未開拓地をカンで開けていって大きく開くことを願うしかないですかね。」
楊ゼンは後ろで大きく溜息をついて目の前にある太公望に頬擦りをする。
「・・・・しかしその方法で何回失敗したのだ?」
太公望はそんな楊ゼンの動作を気にすることもなく、パソコンの画面を睨みつける。
くるくると矢印を動かして開けられる所が無いかと探しているのだ。
「そーですねー。」
楊ゼンはマウスを動かす。・・・マウスを掴んでいた太公望の手を包んで。
(あ・・・・・・・・)
カチッ
「わ――――――――!!!!!」
「ぬお―――――――!!??」
いきなり楊ゼンが動かしていたマウスをうっかり左クリックしてしまった太公望
は慌てて楊ゼンの手ごと離した。
押した場所は「6」の隣・・・つまり危険地帯。
開いた場所には・・・・
「セ・・・・セーフ?」
「3」と書かれていたのだった。
「師叔・・・・いきなりどうしたんですか?」
いつも冷静な楊ゼンもかなり驚いたのか額の汗を拭って太公望の顔を覗き込む。
「なななな何でもないよっ?」
慌ててぱたぱたと手を振り、不思議がる楊ゼンを尻目に先程開けた四角の文字を頼りにカチカチと隣の四角を開けていく。
「気になりますから教えてくださいよー。」
「何でもないっ!!!」
しつこく食い下がる楊ゼンに、太公望は頑として口を割らない。
何故なら・・・
(色んな所を触られていたのに手を握られただけで手元を狂ったなどと言ったら・・っ!今度は何をされるかわからんではないかっ!!!)
太公望はなるべく顔に出さないように必死で自制する。
再び無口になってしまった太公望に楊ゼンは自分が何かしたかと首を傾げるばかり。



・・・・5分後、楊ゼンの操作ミスにより自爆しました。

                                    
  

 

『竜の住処(改)』の竜華様より頂きました。
HP再開のご連絡メールとともにフリーで配布されていた素敵小説ですv
可愛いです師叔・・・・。色んな所を、まさぐられても(笑)手を触られただけで動揺するなんてv
それを動揺しつつも必死に隠そうとしているところも可愛くて^^
ゲームに夢中になって表情をころころ変える師叔も、それをみて楽しむ楊ぜんも素敵です。
ゲームをする二人の体勢がまたなんとも・・・・(ニヤ)
最後のオチにもニヤニヤと笑ってしまいました。
天才楊ぜんのミス!しかも自爆・・・・師叔に怒られる王子の姿が目に浮かぶようですv

竜華様、可愛い楊太小説を有り難う御座いましたv
改めてHP再開オメデトウゴザイマスvv