飛べない鳥のように鳴いてばっかりの情熱。



Sunny days 。



「・・ん・・ッ」
「師叔・・・・」

いつもと変わらない午後の執務室だった。
だからいつものように仕事をしていたら、まずは武王がこっそり抜け出し、それを追いかけて周公旦が席をはずした。
そうしたら隣の席のこの人と二人になってしまって。
師叔は左利きで僕は右だから、時々肘同士が軽くあたる。
その度に上がる心拍数を気取られぬよう、皆がいたときは抑えていたが、二人きりになった途端に鼓動がうるさく鳴っていた。
どちらともなく視線が合って、その先どうなるかなんて計算している余裕もなく肩と肩が触れ合う。
唇が重なって甘い吐息が空気に溶けて、広がっていく。

「ようぜん」
「もう少し・・・」
「ん・・ぁ・・」

いつまでも唇を啄む僕に師叔はやんわり名前を呼ぶ。
けれど離すにはもったいなくて、震える睫毛に口づけ、もう一度唇に柔らかく重ねた。
暖かい部屋の空気と同じように唇同士が暖かかった。

「・・・・またやってしまったな」
「嫌ですか?」
「・・・・別に」
「・・僕もですよ」

フフッ軽く笑い合い、そのあとも何度か唇を寄せ合ってイタズラを仕掛け合う。
決して奥には侵入しない可愛い口づけが、この頃の僕たちを夢中にさせた。



師叔と僕は別に特別な関係でも何でもない。
恋人ではなかったけれど、気付いたらこうなっていた。








「のう楊ぜん、ちょっと書庫に付き合ってくれぬか?調べものがあるのだが・・・」
「ええ、構いませんけど?」

廊下を歩いていたら師叔に呼び止められて、言われるまま書庫に向かう。
何となく感じる気まずさは気にしないようにしたが、どうしても胸の奥で引っかかっていた。

誰もいない薄暗く広い書庫。
広いといっても足の踏み場もないほど所狭しと本が置いてあるので、必然的に僕たちは近くにいた。
本を読む横顔に僕の視線は奪われて、それに気付いた師叔もこちらを見る。

「・・・・ん」

引き寄せられるように口づけ合い、僕は思わず師叔の身体を抱き締めた。
軽く身じろぎした師叔はそっと僕の腕の中を抜け出す。
いつもより、というか最近早く離れていってしまう唇。
師叔は小さく苦笑して再び本に目を向けてしまう。
曖昧なキスのこの頃は苦笑いの毎日で。

正直僕はもっと先に進みたかった。
けれどこんな中途半端な関係、しかもそれが心地いい。
お互いの気持ちが何となく感じ合える僕らは、分かっているのだろう。
足りない。
好きと言えば簡単なのに。

「なんかいつもより暗いと思ったら、今日は曇りだったのう・・」
「火をお持ちしましょうか?」
「いや、もう調べものは済んだから」

書庫に1つだけ有る小さな小窓から灰色の空が覗けた。
師叔が僕の肩を軽く叩き、出ようと促す。
先を歩く彼の柔らかい髪に、そっと触れてみたくなった。


虚しくあの空が晴れたとしても僕らはずっとこのまま。
ちょっとでも、ねぇ、こんなままで最高ですか?


「師叔・・・・」
「わっ・・」

後ろから唐突に抱き締める。
抵抗しない師叔はかわりに身体を預けてきた。

とめどなく長いパズルのような、この頃の僕たちの気持ちは。
抱き合えれば完成じゃなくて何かが一枚足りないんだ。

ちゅっと、ふいに感じた唇の感触。
師叔が楽しそうに笑って、もっとと強請る瞳をする。
ねぇ、こんなままで最高?



あぁ君にも問いたいなぁ・・・

 

 

気持ちを伝えないままずるずると続いている関係。
そこからもうちょっと進みたいと考える王子・・・。
変な駄文・・・・何だコレ・・・。
もとネタは宮本浩次の『Sunny days』。