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                |  遊園地デート/りんご
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                天気は快晴。 
                今日は絶好の遊園地日和。 
                 
                「先生早くなのだ!次あれっあれっ!」 
                「はいはい、あっちょっと望、そんなに走ったら転びますよ!」 
                「大丈夫なのだ〜っ」 
                「・・・まったく」 
                 
                はしゃいで駆けていく望の後ろ姿を見ながら楊ぜんは苦笑する。 
                夏休みの日曜ともなれば遊園地は予想以上に混んでいて。 
                人混みに紛れて見失ってしまわないよう、立ち止まって早くこいこい、と手招いている望をもう一度苦笑して追いかけた。 
                 
                先日、望は楊ぜんのイタズラに最後まで耐え切った。 
                その後は焦らされ続けた身体が熱くて苦しくて、泣き出してしまったのだが。 
                けれどその分いつもよりたくさん気持ちよくされたし、こうして遊園地にも連れてきてもらえたのだから望はかなりご機嫌だった。 
                 
                混んでいるにも関わらず、望は次々とアトラクションを制覇していく。 
                あちこちと駆け回る望は若いからいいのだが、それに付き合う楊ぜんはそうはいかない。 
                ちょっと休憩ーっと言って望の手を引き、木陰のベンチに腰をおろす。 
                 
                「先生・・・大丈夫か?疲れた?」 
                「ちょっと。やっぱり若さには勝てませんね・・・」 
                「ごめんなさいっ・・。わし勝手に行動しちゃって・・・」 
                「望のせいじゃありませんよ。それに望のおかげで今日はすごく楽しいですし」 
                「・・・・わしもなのだっ///ジュース買ってくる!」 
                 
                真っ赤な顔で言葉を返すと、望はダッシュで自動販売機のところへ走っていく。 
                だんだんと人混みに紛れて小さな後ろ姿が消えても、楊ぜんはずっと可愛いなぁとクスクス笑っていた。 
                 
                 
                 
                 
                 
                「せんせ・・・っあ」 
                「ねえねえ彼女一人?」 
                 
                ジュースを買い終え、楊ぜんのいるベンチまであと少しというところで、望は見知らぬ男2〜3人に絡まれてしまった。 
                絡まれるというか、『彼女』と望を女だと勘違いしている時点でナンパだが。 
                でもそんなことを知るはずもない純粋な望は、律儀に男達に対応してしまう。 
                 
                「一人ではない。ちゃんと連れがおって・・・・あの・・・通してほしいのだが」 
                「喋り方可愛いね〜vねえ、そんな連れほっといて俺らと遊ぼうよ?そのほうが絶対楽しいって」 
                「やっ・・・離せ・・!」 
                 
                逃がさないよう小柄な望を囲み、男の一人が強引に望の腕をひっぱる。 
                さすがにヤバイと気付いた望が抵抗しようとしたとき、いきなり強い力でぐいっと後ろへ引き寄せられた。 
                 
                「んだよテメェは・・!」 
                「あ・・・っ」 
                「僕の彼女に何かご用ですか?」 
                 
                 
                ・・・・・!! 
                 
                 
                怒りを含ませた身も凍るような冷たい視線。 
                それに加えて男でも見惚れるような美貌で睨まれ、男達はそそくさと退散していった。 
                はぁっと溜め息をつき、腕の中の太公望をそっと離す。 
                視線はいつもの優しいものに戻っていて、何かされました?と心配してくれるのが嬉しかったけれど。 
                 
                望はただ、赤い顔と胸のどきどきを隠すように首をふるふると振るだけだった。 
                 
                 
                『僕の彼女』 
                 
                 
                先生、の・・・? 
                 
                その場の勢いで言われた台詞でも、望には凄く嬉しかった。 
                この前の胸の痛みと一緒で、それが何故かは分からなかったけれど、この前痛いと思った場所が今度はどきどきいっている。 
                 
                 
                他の奴に触られるのは嫌だと思った。 
                だけど先生は、違う。 
                先生の触り方はすごく優しいから。 
                 
                 
                「・・望っ望!どうしたんですかぼぅっとして」 
                「べ、別になんでもないのだ。それよりはい、先生のジュース」 
                 
                誤魔化すように望はジュースの缶を楊ぜんに押しつける。 
                望の赤い顔に首をかしげながら、楊ぜんはそれを受け取り。 
                 
                「これ飲んだら次あそこ行きませんか?お化け屋敷vここ怖いって評判ですし、一度入ってみたかったんですよ」 
                「・・・・・・えぇっ!;」 
                「・・・もしかして怖いの苦手ですか?」 
                 
                赤い顔を瞬時に青くし、涙目でこくこくと頷く望。 
                反対に楊ぜんはにやっと笑い、嫌がる望の手を強引にひいて目的の場所へ向かっていった。 
                 
                「やだぁ〜〜!!!」 
                 
                前言撤回!! 
                先生はやっぱり優しくない!意地悪なのだ〜><!! 
                 
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