夏っていいねっ。
今日は真夏日。
「の、のう普賢・・・・やっぱりやめぬか・・・?」
「何言ってるの望ちゃんv言い出したのは望ちゃんのほうだよ?」
「そりゃぁ・・・・でっでも恥ずかしいし!」
「・・・・えいっv」
「わっ!やっ普賢・・・・服やぶれる!」
「望ちゃんってホント肌綺麗だよね〜僕負けてるかも」
「ひゃっ!触るでない〜///」なんてゆう戯れの声を聞きながら立ちすくむ天才が一人。
いつまでたっても執務室に顔を出さない太公望を、喜んで迎えに来たのだが。
扉の向こうから聞こえてきた会話に石と化してしまった模様・・・。
「ほらほら早く脱いでv早くしないと誰かが様子みにきちゃうよ」
「む〜・・・・で、でもぉ・・・・・・;」
「じゃ、僕が脱がしてあげるね〜vv」
「じ、自分で脱ぐ!自分で脱ぐからっ!!」
ドカッ!バッターン・・・・・!!
「って!何浮気してるんですか師叔!!!?」
やっと我に返った楊ぜんが、扉を蹴破って太公望の部屋へ踏み入った。
そこで彼が目にしたものは。
「よ、楊ぜん??」
「ほら〜望ちゃんが早くしないから楊ぜんが来ちゃったじゃない」
「・・・・・普賢様・・・僕の師叔になにしてるんですか・・・っ」
「別に〜・・・只ちょっと、ね♪」
目の前の光景に楊ぜんは怒りを抑えた声で問い掛けるが、あっさりエンジェルスマイルではぐらかされてしまう。
ベットの上で2人、倒れこんで太公望の服ははだけ、さらにその服を脱がそうと普賢の手が掛けられて。
愛しい自分の恋人が他の男に押し倒されているのだ。
これを見て冷静でいられる人間がいようか。
今にも普賢に詰め寄ろうとする楊ぜんを見かねて、太公望がおずおずと訳を話し始めた。
「落ち着くのだ楊ぜん・・・これには色々わけがあっての?(こやつ絶対勘違いしておる〜;;)」
「わけ?」
楊ぜんの視線が今度は太公望に移る。
キツイ瞳に見つめられ肩を竦めて、太公望は普賢に助けを求める。
「そうそうv望ちゃんが今のままの服じゃ暑いっていうから、僕が夏用の服持ってきたんだよ」
「・・・それでどうしてこういう状態になったんです?」
「わしが着るのを嫌がったのだ。だから普賢がコレを着せようとして・・」
「コレ?」
コレじゃ、と言って太公望が差し出したものに、楊ぜんは怒りも忘れて驚く。
胸元に小さな桃の刺繍が入ったピンク色のキャミソール。
そして純白のレースがついたミニスカート。
それは確かに夏用の服だが、どう考えても男が着るようなものではなかった。
でも可愛らしく華奢な太公望が着るのなら別で。
その他にも色々とアクセサリーが並べられていた。
「・・・・師叔がコレ、着るんですか?」
「そうだよ♪さっ望ちゃんお着替えしようね〜vv」
「う〜;普賢・・・どうしてもっとマシな服持ってきてくれなかったのだ;」
「コレが一番望ちゃんに似合うと思ってさ。それとも僕が持ってきた服じゃ嫌・・・?嫌じゃないよ、ね?」
「・・・・・・」
有無を言わせないニッコリとした笑顔で言われ、太公望は冷や汗を流しつつこくこくっと頷いてみせる。
親友にはとことん弱い上、嫌などと言ったら後でなにされるか分からない。
はぁと溜め息をついて、太公望は仕方なしに服を脱ぎだしキャミソールに手をかけるが、ハッと視線に気付いた。
「人の着替えを凝視するでないバカ楊ぜん///!!でてけっ!」
先程までの厳しい表情はどこへやら、と言う感じでにやにやしていた楊ぜんに枕をぶつけて追い出す。
どうして普賢様はいいんですか〜っなどという文句は無視されて。
納得いかないまま律儀に扉の前で待って数分後、普賢から入室の許可がでた。
可愛いだろうな・・・と、楊ぜんは先程の服を着た恋人の姿を想像しながら扉を開ける。
「・・・師叔・・・」
「な、なんじゃ///」
扉を開けたまま固まってしまった楊ぜんに、恥じらいながらも太公望はその側へ行く。
可愛いでしょ〜?と何故か自慢げな普賢の声も耳に入らず、楊ぜんは想像以上の姿に見惚れていた。
昼間のこんな明るい場所では滅多にみられない白い肌。
細い腕や肩、綺麗な鎖骨が露わになり、スカートからはすらりとした脚が、これでもかというほど覗いていた。
柔らかい朱髪は軽くピンでとめられており、微かに香水のいい匂いまでしている。
ふいに袖をくいくいっと引かれたと思ったら、目の前には太公望のドアップ。
薄く化粧もしているようで思わず楊ぜんの理性がぐらっと傾く。
「のう・・・やっぱ変かのう?・・こんな格好」
「変だなんて・・凄く可愛いですよ師叔、よくお似合いです」
「でも男がスカートなんて・・」
「ファッションだよ望ちゃんv大丈夫、凄く似合ってるんだから誰も何も言わないよ。ど?涼しい?」
「うむ!これなら過ごしやすくて最高じゃv」
有り難うと普賢にお礼を言うと、太公望はそのまま部屋を出ていってしまった。
四不象あたりにでも見せにいったのか。
何気なく二人でその後ろ姿を眺めていたが、ポツリと普賢が呟く。
「ねぇ・・・夏っていいよね」
「は?」
満足げなその声に隣を振り向けば、やはり満足げに・・・というかうっとりと悦にはいって太公望の後ろ姿を眺める普賢。
楊ぜんが何か言う前に、そのままうっとりとしながら普賢は仙界へと帰っていった。
夏にしかあんな太公望の姿は見られないのだから。
普賢の気持ちをわからなくもないらしい楊ぜんは、同じようにうっとりと目を細め満足げに溜め息をついたのであった。
★★★
「しっかし夏ってやつはいいよなぁ・・・天化」
「そうさね王様・・・・」
「何てったって女が薄着!これ最高!」
「エロいさ〜王様」
お前もだろ?と返せば反論は何もない。
ニヤニヤと笑い合って、姫発と天化は前方の光景に見入った。
いつものごとくプリンちゃん探しで仕事を抜け出した姫発。
それを探しに来た天化だが、今は二人そろって木陰で近くの池を眺めていた。
そこでは着物の裾を膝上までたくし上げ、水遊びを楽しむ女官たち。
彼女たちの夏用の着物は生地が薄く、ふいに水がかかって濡れるたび身体の線を強調していた。
健康な成年男子にはそれはとても良い目の保養で。
「あ・・!王様アレ!」
「・・・・た、太公望・・!? 」
先に気が付いたのは天化で、今まで眺めていた池を指さす。
その方向を見た姫発も一瞬で気が付き、信じられないように2、3度目を瞬く。
二人にとって確かに見知った人物だったがその格好が問題であった。
太公望は自室を出た後、数人の女官に捕まってしまい
『こんな可愛らしいお姿みんなに見せなければ勿体ないですわ』とかなんとか言われてもっとも人目につく中庭へ連れてこられた。
最初は大勢の人に見られ恥ずかしがっていた太公望だったが次第に慣れ、今では女官達と一緒に水遊びを楽しんでいる。
たまにはしゃぎすぎて短いスカートがふわっと捲れ上がり。
男とは分かっていても、その場にいる全員が太公望に釘付けである。
「楊ぜんの趣味だな・・・アレはやっぱり」
「でも師叔可愛いさーホントの女の子みたいさね」
「下着まで女物だったしな」
「・・・・あんたやっぱりエロいさ王様。それ言ったら絶対楊ぜんさんに殺されるさ・・・」
天化の容赦ないツッコミにぐっと唸るが、その目はやはり池に向けられており。
美女たちが戯れる様を眺めて、夏っていいよなぁ〜と再確認した二人だった。
★★★
「師叔!こんなところにいらしたんですか」
「楊ぜんっ」
背後からかけられたよく知った声に太公望はパッと振り向く。
しかしその姿をちょっと見ただけで、すぐに視線がふいっと逸らされてしまった。
おや、と楊ぜんは太公望の正面に回り込むが、今度は顔ごと逸らされてしまう。
先程まであんなに機嫌がよさそうだったのにどうしたのだろう。
「どうしたんですか師叔?拗ねてます?」
「拗ねてなどおらぬっ」
「じゃあこっち向いてください。僕はあなたを見に来たのに」
「イヤじゃ!お主なんかあっちいけっ」
逃げるように太公望は池をでようとする。
けれどそんな言葉で楊ぜんが引くはずもなく、背後から小さな身体をぎゅっと抱き締めて捕まえた。
いやいやと身体を捩って逃げようとする太公望だが、そう簡単には離してくれない。
ところでここは大勢の人目がある中庭である。
そんなところでイキナリいちゃつかれ(?)おいおいと思う城のメンバーだが、ここで邪魔をしてはあの天才道士に殺されてしまう。
「離せ楊ぜん!暑い!う〜;みんなが見ておるのだ〜><///」
「嫌です。あなたがこちらを見てくだされば離しますよ」
「だって・・・・・」
「だって?」
「楊ぜん・・・わしを疑った」
「え?」
急に声のトーンが下がり、太公望が悲しそうに俯く。
楊ぜんは、どういうことか、と問いかけるように顔を覗き込むがまたふいっと逸らされて。
相当拗ねてしまっている恋人を、一度腕を解き身体を反転させまた抱き締める。
その胸に顔を埋めるようにして太公望も楊ぜんに抱き付いた。
「・・・浮気なんてわし・・・絶対しないのに・・・」
「・・・あ」
先程の自分の発言を思い出し、楊ぜんは罪悪感に駆られる。
誤解とはいえ太公望を信じなかったことになるのではないか。
ぎゅっと抱き付いたまま離れない太公望をさらにきつく抱き締める。
只今二人とも周りがまったくみえていない状態・・・。
ギャラリーは見て見ぬ振りを決め込んでいる。
「ごめんなさい・・・傷つけてしまって・・・僕がバカでしたね」
「そうじゃこの大バカ者っ。わしはたいそう傷ついたぞ!どうしてくれる!」
「どうしたら許してくださいますか?」
「・・・・こ、今夜桃10個持ってわしの部屋にくることっ///!」
「師叔それって・・・」
誘ってます?と耳元で囁いてみれば途端に真っ赤にそまる耳たぶ。
そこで揺れるハートのイヤリングを唇でそっと揺らし、ふっと息を吹きかけると太公望が逃げようと身体を屈める。
すると胸元がふわっと開き、高い位置から太公望を見下ろす格好の楊ぜんには少し汗ばんだ薄い胸がハッキリ見えて。
楊ぜんはう〜と唸る太公望に気付かれないようニヤリと妖しい笑みを浮かべると、その軽い身体をひょいっと抱き上げた。
驚いて暴れる太公望は無視して、楊ぜんはすたすたと人気のない城の陰に移動する。
「な・・・なんじゃイキナリ・・!?」
「スミマセン・・・急にあなたを他の奴等に見せたくなくなってしまってv」
「はぁ?」
「こんな可愛い師叔を皆に見せるのは勿体ないです。減ってしまいます」
「ダアホ///」
ぎゅっと抱き締められて、恥ずかしがり屋の太公望は胸に顔を押しあてて隠してしまう。
独占されることが嬉しいなんて。
普段なら暑いから離せ!とすぐに突っぱねるのが、今日は何故だか大人しくなってしまう。
服のせいで心まで女の子のようになってしまっているのう・・・とぼんやり考えていると、いつの間にか楊ぜんの手が身体を撫で回していた。
「お主何をしておるのだっ!やめんか〜!!」
「あんな風に可愛く誘う師叔がいけないんですよ?あれで僕が我慢できると思います?」
「・・・だ・・・だって///」
「大丈夫・・・ちょっとだけ、ね」
「っあ・・・」
抵抗虚しく、感じやすい太公望の身体はすでに楊ぜんの手の動きに翻弄され。
布越しとはいえ、薄いキャミソールの上から胸を撫でられて、堪らず小さく声をあげる。
心地よい香水の香りにうっとりしながら、楊ぜんは更に胸を苛め続け。
「もうこんなになってますよ師叔?最近暑いからしたくないなんていってましたけど・・・・ホントはしたくてしょうがなかったんじゃないですか?」
「ひゃんっ!やぁ・・・ぁ・・・ん・・・っ」
反論する暇もなく、緩い刺激にぷくっとしてきた胸の突起を布越しに摘まれてそのまま弄られる。
どんなに身体を引いても指は追いかけてきて、太公望のそこはつんっとキャミソールを押し上げて硬くなってしまっていた。
恥ずかしくて太公望が胸を隠そうとしたがその手は楊ぜんの手に捕まって。
いやいやと首を振るがじっとそこを見られてしまう。
「やらしいですね・・・師叔こんなにして」
「厭らしいのはお主のほうじゃっ///暑い離せっ!」
「やですよ〜vこのままここで・・・vv」
「バカ者!!」
ドカッ。
見事太公望の右ストレートは楊ぜんの鳩尾にきまったようで。
それなりのダメージをうけている間に、太公望はてててと逃げていってしまった。
怒らせてしまったかな・・・と楊ぜんが溜め息をつくのと同時に、太公望がスカートをふわっとさせながらくるりと振り向く。
「・・・今夜!忘れるでないぞ桃10個!・・・・早く・・・来るのだぞっ///」
そういうと今度こそ太公望は逃げていってしまった。
楊ぜんはといえば妙に積極的な恋人の発言に半ば放心状態で。
「夏って・・・・いい」
誰にともなく呟き、小さくガッツポーズで幸せを噛みしめるのだった。
「・・・見たか天化?」
「・・・ばっちり見たさ王様」
いきなり楊ぜんが太公望を抱き上げて城の陰にかくれてしまったが。
この二人の位置からは全てが見えて。
「AVなんかより断然色っぽい声だったよな・・・・太公望のやつ」
「おれっちちょっとヤバかったさ・・・」
「あ、俺も」
コレがあの天才に知られれば封神どころでは済まされない気もするが。
一夏の思い出、と言い訳して。
しかし太公望はその格好で夏中通し、可愛い軍師の姿を目にする度夏っていいなぁ・・・と思わざるを得ない周のメンバーであった。
夏っていいねっ!
おわれ。
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