□ 御雑煮 □
「ほれ、できたぞ」 コタツに入り、楽しくもない正月番組をぼんやりと眼に映していると、不意に台所から声がして、楊ゼンは振り返る。 見れば、太公望はオボンを両手に、ニコニコと笑っている。 ほかほかと白い湯気が二つ。 「有難う御座います」 プツリと躊躇いもなくTVを消すと、手を伸ばし、少し大きめの御椀をコタツ机の上へ並べて行く。 ちょこんと並べられた御椀は、 白い湯煙を出しながら、 箸の前で一休み。 「師叔の作る御雑煮美味しいんですよ」 云うと、目の前に腰を落ち着かせた彼を確認し、微笑む。太公望も少し照れくさそうに笑った。 「いただきます」 ずるずると、何処までも延びる餅と悪戦苦闘している太公望を何気なく見て、ポツリと一言。 「師叔、餅をそんなに食べるのですか?」 覗けば、柔らかい白い物体が4個。 自分のは、注文どおり、1個。 「悪いか?」 やっとちぎれたらしく、もぐもぐと口に含みながら、太公望は然して気にも止めずに答える。 きょとんとした表情からは、4個くらいどってことない。といった感じが窺えた。 「悪くないですけど」 ほうれん草をつつきながら楊ゼンは続ける。 「太ってしまいますよ?」 冗談マジリに、何気なく、パクパクと餅を頬張る太公望に云うのだった。 彼の眉毛が、ピクリと反応を示す。 楊ゼンは然して気にも止めずに、ずず。とつゆを飲み始めた。まだ、彼の御椀の中には、餅がぷかぷか遊泳中。 チラリと彼を見れば、じーっと、餅を見つめているではないか。 どうやら、何気ない一言が、彼にショックを与えたらしく、楊ゼンはフウと溜息をつくと、コトリと御椀をおいて、笑いかける。 「大丈夫ですよ。今年もいっぱい運動するじゃないですか。二人でv」 得意満面の笑みでもって、云うのだった。 暫く考えていたらしい太公望だが、漸く言葉の意味を理解すると、みるみるうちに彼の顔は、先ほど食べた蛸のよりも、真っ赤に染まる。 そんな太公望を見て、可愛いなあ。なんて思い、クスクスと笑う。 「・・・・・痛ッ」 目線は餅へそのまま。 げs。と急にコタツの中で蹴りを入れてきた太公望は、悲鳴をあげる彼を他所に、再び黙黙と箸を動かし始めた。 結構痛かった足を、コタツの中でさすりながら、 「今年もよろしくお願いしますね」 苦笑いを浮かべ、未だに赤い顔で餅を頬張る太公望に声をかけるのだ。 「・・・・・・・・・・・・・・」 口こそ利かないが、 確かにコクリと頷いた。 fin. |
黒松様から頂きましたv
黒松様のサイトKUROISMのお正月企画での小話です。
クリスマス同様、たくさん小話がある中で
全部はさすがに図々しいのでこれだけでも強奪させて頂きましたv
お餅を4個も食べるなんてさすが師叔ですね。
あの細い体のどこに入るのでしょう?
太ってしまう、なんて師叔は少し太ったくらいが丁度いいのに
気にしてしまってる師叔が可愛らしいですv
それに王子はたとえ師叔が太ったりしても変わらず愛してくれるでしょうし^^
あ、でも今年もたくさん運動するから太らないか・・(にや)
今年の楊太もこんな風に1年ずっとラブラブしてるのでしょうねv
素敵な小説を有り難うございました!