ペチャパイ 後編
今日も体育があることをすっかり忘れていた。
呂望は体操着を借りに行っていたため皆より遅くなてしまい慌てて更衣室に向かう。
普賢にも先に行っていて良いと言っておいた。
もうすぐチャイムも鳴りそうだけど。急いで着替えたりしたもののグランドに向かう足取りは重い。
昨日の事が頭を掠めて追い払うように左右に首をふる。
朝会ったとき、楊ぜんにはなんでもないと笑ったけれど。それは嘘。
昨日勝手に帰ってしまったことには怒ってなくてホッとした。
何か言いたそうな自分に、話したくないことは話さなくていいと言う優しい彼に胸が痛む。
言いたいけど言えないんだよ。
チャイムが鳴る音に何度目かのため息を隠した。
体育なんかサボってしまおうかと階段を下りる足を止める。
「望!」
え?と思って顔を上げたそこには今まで考えていた恋人。
「ど・・どうしたのだ?」
「あなた、昨日も朝もなんだか元気がなかったから。
グランドに望の姿がなくて心配だったんです。具合が悪くて保健室に行ったのかと思って・・・」
「楊ぜん・・・・」
やっぱりとても優しい彼に呂望の心の重みが軽くなる。
いつでも敏感に自分の変化に気付いてくれる楊ぜんに嬉しくなり、微笑みながら駆け寄ろうとした。
もう何も気にしない、と思ったのに。
「楊ぜん君〜こんなところでなにしてるの?」
「!」
楊ぜんを探しに来たのは昨日の少女。腕を引っ張って連れ戻そうとする。
楊ぜんはそれを困った顔で断っているのだがなかなか諦めない。
さっき気にしない、と思ったばかりなのに。
また浮き上がる不安。嫌でも胸に視線がいってしまう。
それを見てハッと今自分も体操着な事を思い出す。差がハッキリわかってしまう。比べられたくない。
くるりと踵を返し、呂望は階段を夢中で駆け上がった。
「ちょっと・・!望!?」
「楊ぜん君!?どこいくの!?」
もうヤダ。自分が嫌いだ!
胸とかそんなの関係なく、こんな自分じゃ嫌われたとしても仕方がない。
「・・っきゃ!」
いきなり腕をひかれ体勢が崩れる。足下は階段。
重力に従って落下していく浮遊感を感じながら次にくる衝撃に呂望はぎゅっと目を瞑った。
「え・・・・?」
「大丈夫ですか」
衝撃はなく、腕を引いた張本人である楊ぜんの胸の中に受けとめられる。
密着している身体に気づき離れようとしたのに逞しい腕に阻まれ、呂望は抵抗した。
「望・・・いきなりどうしたんですか?何か・・・」
「やだっ!・・・楊ぜ・・・やぁ・・離して・・見ないで・・・っ!」
自分の身体を抱きしめて涙を流す呂望に驚く楊ぜん。力無く首を振るたび雫が辺りに散る。
そんな恋人を離せるはずもなく、逃げる呂望を力任せに抱きしめる。
よしよしと背中をさすってやり落ち着くのを待ち続けて。
しばらくして自分の背中にも細い腕がまわった。
まだ涙が止まらぬ様子の呂望の髪を何度も優しく梳いていると
ポツリ・・・と可愛いらしい唇が言葉を紡ぎだした。
「・・・すまぬ」
「いいえ。・・・でも、よければ訳を聞かせて頂けますか?」
「・・・・・・・・」
「・・・望」
顔を覗き込まれ紫の瞳と目が合った呂望の頬が微かに染まる。
パッと俯いて、それからやっと観念したようにポソッと言った。
「だって・・・・お主だって小さいより・・・・大きいほうが好きであろう・・?」
「は?」
「こんなペチャパイ・・・・・」
「はい??」
まったく意味が分からなかった楊ぜんだったが。
これ以上は言わない!、と言うふうに真っ赤になって睨まれ、ああ・・・と気付く。
控えめに胸を覆う仕草が可愛いなと微笑みが漏れて。
「バカですねぇ・・・あなた」
「なっ・・・!!」
抗議する唇を唇でふさぐ。
軽くちゅっと音をたてて離したあと楊ぜんはその小さな身体をこれでもかというほど抱きしめた。
「もぅ・・本当に可愛いんだから。最近元気なかったのはそんなこと考えてたからですか?」
「・・っそんなこと、でも・・・・!
わしにとっては昔からの悩みなのだ!!お主だって大きいほうが好みであろう!?」
あの子みたいに・・・
楊ぜんは呂望の沈んだ声にクスっと笑い少し赤い耳元に囁いた。
「僕が好きなのはあなたです。
胸の大きさなんて気にしていないし、むしろ望くらいのほうが僕は好みですよ?」
「・・・・・ホント・・?」
潤んだ瞳で見上げてくる呂望にゆっくりと微笑んでまた一つ口づける。
「本当です。それに胸が大きいと色々不便ですよ。痴漢にあったり、肩が凝ったり」
「・・む。確かにのう・・・・小さいと早く走れるし、それに以外とノーブラでもばれないみたいだし」
「ノー・・・って!えぇっ!?望あなたまさか・・!?」
「例えばの話だ!!勘違いするでない!」
まさに服を捲って確かめようという勢いの楊ぜんの頭をポカッと叩く。
顔はまだ熱かったが、涙はもう止まっていた。
こんなにあっさり安心させられて。
いっぱい悩んでバカみたいだ。
「イテテ・・・あ、それから僕、あなたの身体じゃなきゃ欲情しないんです」
「よっ・・くじょう!?するのか?こんな貧弱な身体に!?」
「当たり前じゃないですか。何度襲いそうになったことか・・・。
だけど望は嫌がっているみたいだったから・・だから抑えていたんですよ?」
バレてた。
「僕に見られたくなかったから?」
額と頬に優しく口づけられて問われ、思わずこくんと頷いてしまう。
自分みたいな子供の身体、見た途端興醒めだろうと思っていた。
大きな胸に憧れて、それを思うたびコンプレックスが益々大きくなっていく。
だけどそうじゃないって、言ってくれて嬉しかった。
一番嫌われたくない楊ぜんに。
「可愛いな」
「ん・・やぁ・・・って何処を触っておるのだお主!?」
知らないうちに髪を梳いていた手が前に廻り、両方の呂望の小さな膨らみを包んでいた。
やわやわと軽く揉めばそれだけで甘い声が口からもれ出る。
呂望は初めての感覚に力が抜け、楊ぜんの肩を押し返すことも出来ない。
「感度は抜群のようですね。お望みなら僕が大きくして差し上げますが?」
「・・・ダァホッ!!!」
「他の奴に触らせてはダメですよ?」
「お主にだけに決まっておるだろ」
呂望は恥ずかしそうにそう言って、ふんわりと微笑む。
そして胸にある感触に未だ楊ぜんが手を離していないとわかり慌てて、つい突き飛ばしてしまった。
ヒドイです・・と拗ねる彼がおかしくてチャイムが鳴るまで2人一緒に微笑み合った。
大丈夫。私の胸はアナタ専用。
この小さなむねでとっても強く愛してあげる。
end
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