宝貝だって。


第1話

 


「哮天犬、お手」
「ばう」



僕の名前は哮天犬。
今はちょっと利巧な犬のようにお手なんてしてるけどホントは強い宝貝なんだ。
ご主人様があの天才道士楊ぜんということはかなり有名。
そのご主人様が、今僕と遊んでくれてる師叔のことが好きなのも有名だ。
でも本人は気付いてくれないんだって。

「お主はホントに賢いのう〜。うちのスープーとは大違いじゃ」
「くーん・・・」

そんなこと言ったら四不象が悲しむよ。
四不象は師叔のことが大好きって言ってたから。
そう伝えたいけど僕は喋れないから、鼻先を師叔のほっぺたに擦り寄せる。
でも師叔は気付いてくれなくて、可愛いって言って抱き締められてしまった。

「むー・・ふかふかで気持ちいいのう。よし!午後の仕事はサボって二人で昼寝でも・・・」
「ばうあうっ」
「ん?どうしたんじゃ哮天犬、わしと昼寝は嫌か?」
「ばう・・・・」

ああ、どうして僕は喋れないんだろう。
師叔とお昼寝は好きだけど、師叔の後ろにいつのまにか立っていた人は許してくれないみたい。
言っちゃだめって教えたいけど、師叔がそれに気付いてくれる前に低い声で名前を呼ばれて小さな肩がびくっとした。

「・・・師ー叔ー・・・・」
「っ!よよよ楊ぜん・・・!?」
「姿が見えないと思ったら・・・ほら、もうすぐ仕事の時間ですから行きますよ」
「嫌じゃ!わしは哮天犬と昼寝すると決めたのだ。のう?哮天犬」

ぎゅうっと抱き締められてぐりぐりと顔を擦りつけられて凄く嬉しいけど。
楊ぜんが僕のことをちょっと怒ったように見てる。
いつもは優しいのに師叔のこととなると人が変わってしまうご主人様なんだ。

「くーん・・・」
「ほら哮天犬が困ってるじゃないですか。早く離して・・・・」

楊ぜんは頑張って離そうとしてるけど、師叔はもっと僕にぎゅっとしがみついて離れない。
僕にまで焼きもちやいてる楊ぜんには悪いけどこうされるのは嫌じゃないよ。
師叔はあったかくて優しいから僕も大好き。

「仕事の後に、よく冷えた桃をご用意してるんですけど・・・・・」
「何!?それを早く言わぬかっ。ほれ、行くぞ楊ぜん!」
「じゃあ哮天犬、師叔は借りてくよ」
「すまんな哮天犬。昼寝はまた今度にのう」

大好物の桃と聞いて師叔はあっさりお仕事に行ってしまった。
楊ぜんは凄く嬉しそうに笑ってその後ろをついて行く。
残された僕はしばらくしてふあっとあくびして、一人でのんびりお昼寝タイムを楽しむことにした。

楊ぜんが嬉しそうに笑ってくれるなら僕も嬉しいけど、ちょっと寂しいな。
僕も師叔が大好きだからもっと遊んで欲しかった。
師叔は気付いてくれてるかなぁ。
僕も四不象みたいに師叔とお喋りできたらいいのに。



「その願い、私が叶えてあげましょう」



いきなり怪しい声がして、でも吠える前に怪しい煙に包まれた。
そしたらがくっと力が抜けて、誰かに受け止められたと思ったところで頭の中が真っ白になったんだ。











第2話