宝貝だって。


第2話

 


その日あの蝉玉さんの隣に土行孫さん以外の男がいると噂になったのは。
僕が気を失って少したった頃だった。
そして僕が気がついたとき、何故か僕がその隣にいて、目の前には楊ぜんと師叔が驚いて立っていた。



「こ、哮天犬!?冗談であろう?」
「人の宝貝になんてことしてくれるんですか・・・・」
「まぁまぁいーじゃない。あ、気がついたみたいね」

みんなが一斉にこちらを見る。
僕はどうしていいのかわからなくて、とりあえず楊ぜんのそばに寄ろうと立ち上がろうとした。
けど、何か変。

「・・・あれ?」

前足が人間の手のように見えるし、足はいつもより長い感じがする。
それに僕は喋れないはずなのに。ばうってなるはずなのにどうしたんだろう?
不思議に思っていると、頭を優しくぽんぽんと撫でられた。
この感触は師叔。

「哮天犬、落ち着いて聞くのだぞ?」
「?」
「・・・おぬしは今、人間になっておるのだ」
「・・・・・・」

ええ!?
って、驚きすぎて声にならなかった。
そのかわり慌てて身体を見渡すと確かに僕は人間になっていた。

「白銀の髪にエメラルドグリーンの瞳、おまけに180以上の長身で美形。やっぱり私の思った通りねv」
「ふむ・・・綺麗だのう哮天犬」
「そんなことより蝉玉くん!哮天犬はもとに戻るんでしょうね?」
「大丈夫よ。趣味で作ったただの試作品だし、もってせいぜい2〜3日」

楊ぜんがイライラしてる。
僕がこんな風になって怒ってくれてるのもあるんだろうけど、きっと半分は師叔が僕に綺麗って言ったせい。
わかりやすいご主人様なんだ。

僕はといえば意外に冷静で、2本足で立つのはちょっと慣れないけど喋れるようになったことが凄く嬉しかった。
これで師叔とお話できるんだ。
嬉しいと人間ってちゃんと笑えるんだよね。
生まれて初めてニコッと笑うと、下から僕を見上げていた師叔がいきなりぎゅっと抱きついてきた。

「あーーーー!!」
「きゃ〜v太公望ってば大胆!」

いつものことなのになんで二人は騒いでるんだろう?
不思議に思いながら師叔を見る。僕の身長は高いからいつもより師叔が小さく見えて可愛いな。
しばらくして、ぎゅっと抱きついていた師叔が顔をあげてにこっと笑った。

「この抱き心地は確かに哮天犬じゃな。間違いない」
「師叔・・・・」
「おぬしに名を呼ばれる日が来るとは・・嬉しいのう。あったかい・・・」

僕も師叔とお話できて嬉しいけど、楊ぜんが物凄く睨んでる。
早く離れなさいって言われてる気がするけど、でも僕は一度でいいから師叔をぎゅっとしたかったんだ。
いつもされるばっかりだったからやってみる。
お昼寝してるときのようにあったかくて僕は凄く嬉しくなった。
ごめんね、楊ぜん。




「師叔を抱きしめるなんて10年早いぞ哮天犬・・・僕だってまだしたことないのに!」
「あらあら。男の嫉妬は醜いわよ楊ぜん」
「・・・・だいたい、なんでこんなことしたんですか?」
「私はいつだって恋する者の味方なのよv」
「は?」

近くででぼそぼそ喋っていた楊ぜんが変な声をだした。
それと同時に、師叔が名案が浮かんだと言わんばかりにぽんっと手をうつのと重なった。

「のう哮天犬、せっかく話せるようになったのだしもとに戻るまでわしの部屋に泊まらんか?もっと色々話したい」
「す、師叔!?そんなの絶対反対ですよ僕は!」
「心配するな。おぬしだって話したいこともあるだろうし昼は返してやるよ。でも夜くらい良いじゃろう?」
「駄目です!夜なんて尚更・・・」
「そうと決まればレッツゴーじゃ哮天犬♪今夜は離さぬぞv」

慌てる楊ぜんを無視して、師叔はボケボケしていた僕をひっぱってずんずんと進んでいく。
蝉玉さんが可笑しくてたまらないって顔して笑いを噛み殺してたのは見なかった事にして。
楊ぜんに嫌いになられちゃうかなぁ。
でも僕の手をつかんでる師叔の小さな手が可愛いから、思わずぎゅっと握ってしまった。


「哮天犬!!」


そんなにやきもち妬くなら、はやく好きって言えばいいのにね?










第3話