小さい頃はそれはそれは可愛くて、自分の自慢の生徒だった。






サンタさんにきいてみて






「師叔ーお待たせしました」
「遅い!」

学校帰りの待ち合わせ。
大学近くの小さな公園で待ち合わせて帰るのは昔からの約束だった。
ホットの缶コーヒーをほれっと渡し、自分も一口飲んで温まる。
吐く息が白い。走ってきた楊ぜんの頬も少し赤くなっていて、こっそりと微笑んだ。

「何笑ってるんですか」
「別にー。それより遅いではないか何時間待たす気じゃ」
「そんなこと言ってホントは5分も待ってないくせに・・・それに待たされるってことなら昔の僕はどうなるんですか?」
「それは仕方ないであろう。だってお主が勝手に待っておっただけじゃし」
「あ、何ですかそれ。嬉しがってたくせに」
「覚えておらぬのうー」

なんて、そんなはずないけど。
今では大学生の自分と高校生の彼とでは時間的すれ違いが多く、週一でしかこうして一緒に帰ったりはしないのだが、昔は毎日一緒だった。
楊ぜんの手がふいに冷え切っていた手を包む。
成長しない自分に反して昔の面影がないほど成長した楊ぜん。
昔はわしの役目だったのだがのう、と思いつつ悪い気はしないので握り返してやった。

「ねえ師叔、今日は何やるんですか?昨日が数学だったから今日は・・・」
「今日は勉強なし!ツリーを出して飾り付けじゃ」
「ああ・・・もうそんな時期なんですね。今年はどんなプレゼント貰おうかなぁ」
「・・・・毎年毎年同じなくせに・・・」
「だって欲しいものって言ったら、やっぱり師叔しかありませんし」

何の恥ずかしげもなく笑って凄いことを言うところは昔と変わっていないと思う。
そのせいで自分たちが家庭教師と生徒以上の関係になってしまったと言っても過言ではない。
赤い顔のわしを見て楊ぜんは笑った。
あの時も。そういえば楊ぜんはこんな風に笑った。
5年前のクリスマスだったたろうか?雪でも降りそうな寒空も今日とよく似ているかもしれない。















「すーす!」
「楊ぜんっスマン待ったか?」

元気にふるふると首を振りにこっと笑う楊ぜんだったが、ほっぺが真っ赤で、待たせてしまったことは間違いなかった。
小学校と高校の下校時間が異なるのは仕方がないことだが、それでも毎日こうやって待たれると申し訳ない半分、嬉しかったり。
クリスマスも近い12月後半。
夕方ともなるとかなり寒い。案の定くしゅっとくしゃみをする楊ぜんをコートの中に包んでやる。

「寒いであろう?いつもすまぬのう」
「ううん!哮と遊んでたから全然寒くなかったよ」
「哮?お友達か?」
「白くて大きくてふわふわなの」

白くて大きくてふわふわ??
不思議顔のわしに楊ぜんはクスクス笑って、犬のことだと教えてくれた。
哮という名前は楊ぜんが自分でつけたらしく、公園に住みついている犬ととても仲が良いようだ。
可愛いんだよ、と楽しそうに話す楊ぜんのほうが可愛らしくて、わしが笑うと楊ぜんもつられて笑うからそれがまた一段と可愛いのだ。

「ねえ今日はなにやるのすーす?」
「今日は国語、漢字のテストじゃ」
「えー!じゃあ早く帰って勉強しなくちゃ!」
「日頃から勉強してないからそういうことになるのだぞ?って、あ!こらっ」

仲良く繋いだ手を離すと、楊ぜんはたっと駆け出した。
一人じゃ危ないからと追いかけるが、子供のスピードとは結構に早いもので。
面白そうに笑って振り返ってくる楊ぜんににやっと笑うとわしも一気に加速した。

「よーし家まで競争じゃ!」
「うん!!」

わしの家と楊ぜんの家はお隣同士で昔から、父子家庭でひとりっこの楊ぜんの面倒をよく見ていた。
来年私立の中学を受験する楊ぜんの為に、そこそこ頭の良かったわしは父である玉鼎に家庭教師を頼まれたのだ。
昔から頭のいい子で家庭教師なんて必要ないのではと言ってはみたが、楊ぜん本人からのお願いらしく。
楊ぜんに甘いわしはそのお願いを断ることなど出来るはずがなかった。






「はい、そこまで」
「出来た〜」

自信ありげな楊ぜんからテストのプリントを渡され、それにちょっと目を通してから採点をする。
わくわくとマルを付けていく作業を横から覗いてくる楊ぜんに微笑んで、そうだ、と思いついて一旦手を止めた。
不思議そうにしている顔が可愛くて、思わず抱きしめそうになるが頭を撫でるだけで何とかとどまる。

「のう楊ぜん、このテストが100点だったら明日遊びに連れてってやるぞ」
「えー!すーす、そういうことは早く言ってよ!」
「これ、今は先生と呼びなさい」
「先生っ、早く言ってくれれば僕もっと頑張ったのに!」
「大丈夫じゃよ、ほれ」

ぴらっと目の前に差し出しだされた紙に楊ぜんはちょっと目を丸くして、それからやったー!と飛び上がった。
見事に100点満点な解答にわしも出来の良い生徒をもって鼻が高い。
どこに行きたい?と聞けば、すーすと一緒ならどこでもいいなんて可愛い殺し文句を言ってくれたので今度こそ我慢できずに抱き締めてしまった。
しばらくきゃっきゃとじゃれあって、結局買い物に行こうということになる。

「クリスマスの買い出しにでも行こうかのう。ツリーの飾りを新しいのにして、来週のこの時間はクリスマスの準備じゃ」
「うん!」

ついでに楊ぜんのクリスマスプレゼントも選んでおかねばのう。
今年は何にしようかと目の前のにこにこ顔の楊ぜんを見て考えて、わしは幸せな気分になるのだった。













「楊ぜん・・こっちじゃ!手を離すでないぞ!」
「う〜・・・」

次の日。
クリスマスも近いとあって、出かけていったデパートは凄い人混みで小さい楊ぜんなど押しつぶされそうになっていた。
わしもどちらかと言えば小柄なほうなのでちょっと気を抜けば押し流されそうだったが、なんとか楊ぜんを引っ張って人の少ないフロアへ脱出する。
もみくちゃになって乱れてしまっている楊ぜんの髪を撫でつけてやると、大丈夫だよと今度は背伸びしてわしの髪を整えだした。
ああホントに良い子だのう・・。
と感動していると通りすがりのカップルがわしらを見て微笑んでいるのに気づいた。
何か恥ずかしくて、髪を触る楊ぜんにもういいよと言って再びぎゅっと手を繋ぐ。

「それにしてもやはりカップルが多いのう。男2人なのはわしらだけか?」
「僕たちもカップルに見えるかなぁすーす?」
「ハハ、カップルか・・・似てないけど仲の良い兄弟、ぐらいではないか?」
「ええーっ」

ご不満らしい楊ぜんは頬を膨らませて見上げてくる。
それが可愛くて可笑しくて、折角整えた頭をぐりぐりと撫で回した。
端から見れば恋人同士にしか見えないじゃれあいだが、気付いてないのは当の本人達だけである。

「あれー太公望?」
「は?・・・おお蝉玉ではないか、それに土行孫。デート中か?」

人混みの中から声を掛けてきたのは高校のクラスメートだった。
彼氏(?)である土行孫は半ば引きずられ気味で同情の目をむけるが、敢えて何もいわないでおいてやる。

「そうなのよ、ねーハニーv・・・あれ?そっちのちっちゃい子は?」
「わしが家庭教師をしておる楊ぜんだ。ほれ、挨拶せい」
「へー可愛いvこんにちはv」
「こんにちは・・・・」

人見知りをする楊ぜんはわしの影に隠れながらおずおずと頭をさげる。
苦笑して頭をぽんっと撫でてやり、少しばかり蝉玉と話してからまた学校で、と言って別れた。
その間中黙っていた楊ぜんの機嫌がどんどん沈んでいっていたことに、わしはどうやら気が付かなかったらしい。
買い物中もずっと黙っている楊ぜんに首を傾げていると、帰り道でやっとぶすっとした声で口を開いた。

「あのお姉さんキレイだったね・・・」
「え・・?」
「あのお姉さんすーすのかのじょ?クリスマスもかのじょとするの?」

ツリーの飾りの入った大きな紙袋をぎゅっと抱き締めて楊ぜんが不安そうに見上げてくる。
わしはじっと楊ぜんを見つめた後、大袈裟なほど吹きだした。
そんなことを気にする年頃になったのだのう。ヤキモチなんて可愛いやつめ。

「すーす・・・」
「あのお姉さんにはちゃんと彼氏がおったであろう?それにクリスマスは毎年楊ぜんの家で過ごすと決めておる」
「ほんと?クリスマス僕と一緒?」
「いつもそうではないか、そのクリスマスのために今日も買い物に来たのだぞ?先生の言っておることが信じられぬか?」
「ずっと一緒?」

子供の無邪気な問いかけにすぐに返事をすることは出来なかったが、しかし迷わずこくりと頷く。
これからもずっと一緒ならいいとわしだって思っていた。
嬉しそうにぽふっと抱き付いてくる楊ぜんを軽く抱き締め、頭を撫でてから手をしっかり繋いで家路についた。
楊ぜんの機嫌はもうすっかり良くなっていた。












ふんふんっと鼻歌を歌いながら、引き出しの中に置きっぱなしだった教科書をカバンに放り込む。
今日は家庭教師の日だが、楊ぜんとクリスマスの準備をすると約束していた。
多分今日も先に公園で待っているだろうから、早く言ってやらねばなどと考えていると後ろから誰かに小突かれる。

「なーに浮かれてんのよ太公望。明日から冬休みなのがそんなに嬉しいの?」
「ああそうだのうー冬休みは嬉しいのうー」
「これから彼氏に会いに行くんだよねー望ちゃん」
「か、彼氏!?太公望・・・あんたやっぱり・・・・」
「これ普賢!誤解を招くようなことを言うでないってゆーかやっぱりとはどういうことだ蝉玉!!」

詰め寄ろうとしてハッと気付いた。
この二人を相手にしていては時間がいくらあっても足りやしないのだ。
楊ぜんを待たせていることを思い出し、二人をおいて教室を飛び出した。





「ねえ・・・彼氏ってホントなの?」
「・・・・ゆくゆくはそうなるんじゃない?」















「楊ぜん!すまん待った・・・あれ?」

急いで公園に来たものの、楊ぜんの姿が見あたらなかった。
くるくると辺りを見渡してもどこにもいない。
まだ来ていない可能性も考えたが、小学校の下校時刻はとっくに過ぎている。
まさか・・・という嫌な考えを振り払うように深呼吸を繰り返し、取り敢えず公園内を探すことにした。

「楊ぜん!楊ぜんどこだ?楊ぜ・・・」
「すーす!!」
「楊ぜん!」

すべり台近くの茂みから勢い良く飛び出してきたものに飛び付かれ、意外にあっさりと楊ぜんは見つかった。
ホッと溜息をつき、どうしてそんなところにいたのか尋ねようとしたが楊ぜんの顔をみて驚く。
可愛い顔は涙でぐちゃぐちゃで、わしはオロオロとしながらハンカチで涙をぬぐってやった。

「どうしたのだ?なんで泣いておる?」
「哮が・・哮がいなくなっちゃったの・・・いっぱい探したけどいなくて・・・っ」
「そうか・・・」

いつも一緒に遊んでいた犬がいなくて、探してもいなくて。一人で寂しかったのだろう。
よしよしと落ち着くまで抱き締めて、わしはまだ泣き顔の楊ぜんに悪戯っぽく微笑む。

「のう楊ぜん、哮はきっとみんなより早くサンタさんにプレゼントをもらったのじゃよ」
「サンタさんに・・?」
「新しい飼い主をもらって、哮も今頃あったかい家の中で幸せに暮らしておると思うぞ?」
「哮は幸せ?」
「そうじゃ。だからもう泣くでない」
「・・・うん!すーす、心配かけてごめんなさい」

えへへと笑う楊ぜんの頭をぐりぐりと撫で回してやれば、きゃっきゃとはしゃいでいつもどおりの笑顔が戻る。
手を繋いで立ち上がり、仲良くジングルベルを歌いながら家へとゆっくり帰っていった。

帰りながら歌った歌は鼻歌になり、帰って早々始めたツリーの飾り付けに二人は楽しげに歌を口ずさんでいる。
一生懸命高いところに飾りを付けようとしている楊ぜんを見ながら、わしはふと尋ねた。

「お主はサンタさんに何が欲しいとお願いしたのだ?」
「ひみつ!すーすは?」
「わしはもう大きいからサンタさんは来てくれぬのだよ」
「ええー、大丈夫だよ。くつ下の中に欲しいもの書いていれておけば絶対もらえるんだっ。すーすにも紙あげるね、待ってて!」
「いや、わしは・・・まぁ、いっか」

自分の部屋へ駆けていく後ろ姿をみながら、もしとんでもない事が書かれた紙が入っていたとして、それを見た玉鼎の途方に暮れた様子を想像して悪いと思いながらも笑い転げてしまう。
ずっと笑っているわしを戻ってきた楊ぜんは不思議そうに見上げていたが、あえて気付かない振りをして一緒にツリーを完成させていった。
プレゼントを貰ったときの嬉しそうな楊ぜんの顔も想像してみて、いよいよわしの顔はにやけ顔からしばらく元に戻らなくなってしまった。
明日は楽しいクリスマスだ。










「すーす!哮がいる!!」

予想通り、次の日は楊ぜんの笑顔からはじまった。
ひっぱられるままに楊ぜんの家の庭へ行くと、白くて大きくてふわふわの犬がばうっと鳴いて出迎えてくれた。
そう言えば少し前に哮のことを玉鼎に話したことがあった。
昨日のうちにこっそり連れ帰って、隠していたのか。
楊ぜんらしい欲しいプレゼントに、わしは哮とじゃれている楊ぜんの隣にかがんでぽんっと頭を撫でる。

「良かったのう、哮は楊ぜんと一緒にいたいらしいぞ」
「うん!でもどうして僕の家に哮が居るんだろう?」
「サンタさんがプレゼントしてくれたのだと思うが?」
「えっ・・・・」

それまで花が咲いたように笑っていた楊ぜんの表情が一瞬にして曇っていくのが分かった。
どうしたのだろうと顔を覗き込むとぶすっとした拗ねた顔がそこにあった。

「僕がサンタさんにお願いしたのと違う・・・・」
「楊ぜん?」
「哮じゃないもん・・・・」

どうやら自分の想像通りの途方に暮れた玉鼎の姿が、おとといの晩あったらしい。
どんなとんでもないことが書かれていたか知らないが、困り果てた末に哮をプレゼントすることを考えたのだろう。
哮じゃないなんて言う割に白くてふわふわの背中に抱き付いて離れない楊ぜんに、わしはさながら教師が生徒を説き諭すようまずはコホンとひとつ咳払いする。

「楊ぜん、哮のこと嫌いか?」
「・・・・・好き」
「わしがお主の仲良しだから、昨日サンタさんが相談に来てのう。お主の欲しいものをあげるのはサンタさんにはちょっと難しいそうなのじゃ。だから楊ぜんが悲しまないように哮がかわりに来てくれたのだよ」
「えっえっ!すーすサンタさんに会ったの!?」
「うむ、哮を可愛がってくれと言っておったぞ?」
「凄いよすーす!うん分かった、有り難う哮・・今日からいっぱい遊ぼうね!」
「ばうっ!」

いつもの明るい笑顔に戻った様子にわしは微笑む。
そして極めつけ、とばかりにわしからのプレゼントを出せば楊ぜんが喜んで抱き付いてきた。

「ありがとうすーす!あ・・・でも僕プレゼント用意してないよ・・」
「良いのだよ。これからもっと楊ぜんが勉強を頑張ってくれれば、それがわしへのプレゼントじゃ」
「うんっ頑張る!」

良いお返事に頭を撫でると楊ぜんは嬉しそうに笑い、哮のところにいくとその頭をわしの真似をして優しく撫でていて、可愛くて笑ってしまう。
でもそれはわしだけではなかったようで、いつのまにか庭に来ていた玉鼎が哮とじゃれあう楊ぜんを微笑ましく見つめていた。
わしはさっそく、楊ぜんがくつ下の中に入れた紙には何が書いてあったか尋ねたが、玉鼎は一瞬詰まって後はただ苦笑するだけで教えてくれない。

「直接楊ぜんに聞いてみるといい・・・驚くぞ」
「どんな凄いものねだったのだ楊ぜんは・・・のうっ楊ぜん!」
「何?すーす」

呼ばれてこちらに駆けてくる楊ぜんの小さな肩に手をおき、目線を同じ高さにした。
きょとんとしている顔が相変わらず可愛らしくて思いっ切り抱き締めそうになる。

「のう、お主がサンタさんにお願いしたものって何だったのだ?サンタクロースもプレゼントできないものなんて興味あるのう」
「・・・・・・誰にも秘密だよ?」
「うむ」
「僕、”すーすがほしい”って書いたんだ!」

にっこりと笑う顔は非常に可愛かったが。



バタッ・・・。

いきなり倒れ込んだわしに、何か変な事言ったのかな?と楊ぜんはオロオロしていた。
そりゃ倒れたくもなる。玉鼎が驚くのも無理がないと思った。

「ってゆーかどういう教育しとるのだ玉鼎・・・」
「スマン・・・」

その一言で片づける玉鼎にはぁっと溜息をつくものの、どこかで嬉しがっている自分に気が付く。
むくっと起きあがると楊ぜんが心配そうに見つめてきて、ふいうちでぎゅっと抱き締めてやった。
最初は驚いていたようだが、ぬくぬくした体温に楊ぜんのほうもきゅっとしがみついてきて凄く可愛い。
ホントにホントに可愛いやつめっ。

「ねえすーす。来年はサンタさんに貰えるかなぁ・・・今度サンタさんに会ったときにきいてみて?」
「聞かなくてもわかるぞ?」
「え?そうなの?じゃあ、来年は貰える?貰えない?」
「・・ひみつじゃっ」
「ええー!」

頬を膨らませた不満顔の楊ぜんに笑い、わしは誤魔化すように小さな身体をさっきよりも強く抱き締めた。
その動きに、わしのポケットの中で小さくカサッと紙の音がした。
楊ぜんは気が付かなかったようだが、そこに書かれた内容にわしはやっぱり小さく笑った。

緩んでいる頬に冷たいものが落ちたと思ったら白い粉雪で、今年はホワイトクリスマスに決定のようだと空を見上げる。
それからしばらく、そろって雪を眺めていたわしと楊ぜんにぴゅうっと冷たい風が吹き、仲良く同時にくしゃみしたのだった。





















「なんてこともありましたねぇ・・・」
「お主は可愛かったのう。昔は」
「師叔は全然かわりませんよね」
「ほっとけ」

昔と変わらぬツリーに、昔と少し変わった飾りを二人で付けていく。
高いところなんて全然届かなかった楊ぜんなのに、今は軽々てっぺんの星までつけたりして、嬉しいような悲しいような寂しいような。
こっちが年上なんて思えないほど大きくなった生徒をなんだか複雑な気持ちで眺めていると、それに気付いた楊ぜんが昔と唯一変わらぬ笑顔で微笑んだ。
かと思えばフローリングの床に座りこんでいたのを引き寄せられ、成長した腕の中に抱き締められる。
実を言えば楊ぜんのほしかったものは、希望通り次の次の年のクリスマスに送られた。そういうことになった経緯は秘密だが。

「今年も師叔をくださいね」
「そういう直球なところは変わっておらぬのう・・いいことだとは思うが」

手の中で雪だるまの飾りをぶらぶらさせながら言う。
年々言い方がクサくなっているのがたまにキズだが、楊ぜんだから別にいいか。

「ねえそういえば師叔は今年は何が欲しいですか?」
「わしの欲しいものも毎年一緒じゃよ」
「でも一回も教えてくれませんよね・・・ねえ何なんですか?教えて下さいよ」
「黙秘」

大きな子供は情けない声を出してしつこく顔を覗き込んできた。
お主が昔くれたあの紙が答えじゃよ。

書いてくつ下の中にいれておけば絶対もらえるというのは本当。




「ねえ、師叔ってば」




書かれた内容が知りたければ、サンタにでも聞いてみよ。











欲しいものは今も昔も目の前に。
















Happy merry X'mas !!

 

 




こんな楊ぜんじゃお嫌いか(何故か逆ギレ)
ご、ごめんなさい・・・王子がロリ化しててごめんなさい・・。
一応生徒×家庭教師で書かせて頂きました。
設定としては師叔が高校生で楊ぜんが小学生。
小学生×高校生(・・・)

2002年のクリスマスに配布させて頂いたものです。
その後イベントごとに続編的なのを書いたのですが
それはまた今年のイベントごとにアップしていきたいと思いますー。

04.4.12
諸事情によりほんの一部ですが加筆しました。