これから少しずつ、少しずつ。
今まであなたが背負ってきた苦しみを
きっと僕がとかしてあげる
++Shalala++
「楊ぜん。よーぜん!朝だぞ、早く起きぬか」
すっかり太陽も顔を覗かせ、窓から射し込む朝日が眩しい仙人界の朝。
そんな仙人界のはずれに佇む一軒から可愛らしい声が聞こえてきた。
赤い屋根の真っ白な家・・・・・、仲の良い新婚カップルが住む二人の愛の巣。
聞こえてくるのはその家の奥様の声である。
旦那様を呼ぶ奥様の声は、今日も今日とて清々しい空気の中に響きわたっていった。
「ようぜーん!」
もう一度少し高い、可愛らしい声を大きくして
太公望は未だ寝台で気持ちよさそうに寝息を立てている楊ぜんを起こそうとしている。
身体を優しく揺らし、覚醒を促すがそれでもまだまだ起きる気配は感じられない。
それに焦れた太公望は揺らすのをやめ、今度は寝台の上の身体にぱっと飛び乗った。
「おーきーろー」
「う・・・・んん・・」
楊ぜんの上へ馬乗りになり、自分の体重の重みで起こそうとしているのだろうが
重いどころか軽すぎる太公望の体重では、この行為はまったくの無駄である。
ほんの少し唸っただけで、一向に楊ぜんは目を覚まさない。
「ぬぅ〜・・」
まったく。
結婚する前にもわかっていたことだったが・・・・・・・のぅ。
わしの旦那様は、どうにも朝というものに弱いらしい。
封神計画が終了して早二ヶ月。
色々な者の心に傷を残し、壮大な計画は終了した。
その中で出逢い、認め合い、惹かれ合った太公望と楊ぜんは
計画終了一ヶ月後、可愛い一番弟子を手放すのが惜しいらしい
元始天尊からの激しい反対を押し切り、このたびめでたくゴールインを果たした。
つまり今二人は、世間で言う「新婚さん」というわけだ。
「楊ぜん!」
もう一度大きな声で呼んでみるが、やはり反応がない。
しょうがないのぅ・・・と呟きふうっと短く息をはいて
太公望は楊ぜんの上に乗ったまま体を折り、その耳元に唇を寄せた。
そして直接息を吹き込むようにそっと囁く。
「・・・・・・・・・・・はやくおきて」
そのまま唇を滑らし、頬にちゅっと口づけてやる。
自分からしたにも関わらずその行為が恥ずかしかったのか
太公望は頬をかすかに染めてパッと身体を離そうとした。
けれど、いつの間にか腰のあたりに回されていた腕にグッと引き寄せられ抱きしめられてしまった。
「なっ・・・・////起きておったのか?」
「今起きたのですよ。あなたからの目覚めのキスでvv」
ふふっという上機嫌な笑みが耳をかすめてくすぐったい。
「起きたそばからテンション高いのう・・・お主」
まったく寝起きは悪い癖に起きてしまえば常と同じとは。どうゆう体質なのか。
まあ、昔からそうっだったのだから今はもう慣れたのだが。
そんなことを考えている太公望を余所に
楊ぜんは抱いている体をそのまま抱え、ベットから起きあがり太公望をひざの上にちょこんとのせた。
狭い額にちゅっとひとつキスを落として、綺麗に微笑む。
「おはようございます師叔」
「うむ。おはよう楊ぜん」
こちらも負けないほどの笑顔で。
「朝ご飯できておるぞ。まだ、そんなに上手くはできんかったのだが・・・・」
「あなたが作ってくださったものなら何だっておいしいですよ」
微笑みながら優しく言われる。
「そ、そんなもんかのう・・・・///で、では冷めてしまわぬうちに早く飯にするぞ!」
「え〜〜。もうちょっと朝のラブラブを楽しみましょうよ〜」
離しませんっと言うように、細い腰に腕を巻きつかせる。
はぁ〜??といったふうに太公望は顔をしかめた。
「なにがラブラブだ!わしはただお主を起こしに来ただけじゃ!」
「それがラブラブvなんですよ。キスで起こしてくださるあたりまさに『新婚さん』の朝!
それに、キスはあなたからしてくださったんですよ師叔?」
ね?と微笑む顔にうっ・・・・・・と言葉に詰まる太公望。
その頬に楊ぜんは嬉しそうに何度も何度も口づける。
「のわっ!や、やめぬか・・・・・!」
両手で精一杯楊ぜんの肩を押しやるが、がっしり抱き込まれた体勢と力の差のせいでその身体はぴくりとも動かない。
「はなせーー!!早くしないと飯が冷めてしまうだろーーーー」
それが悔しくなってきた太公望は、今度はポカポカと楊ぜんを叩き始めるが
そんなことにはお構いなしに、楊ぜんはさらに額にもちゅっと口づける。
と。
あっ、そういえば。と額に口づけている状態で呟きながら楊ぜんは
振り回されている太公望の手を器用に受けとめた。
「おはようのキスがまだでしたよねvv」
「ダァホ!今いっぱいしただろうが」
「ここ・・・・・・・、にはまだです」
勝手に顔中に口づけられ、少々ご立腹の太公望の怒ったように尖らされている唇に
長くしなやかな指先をそっと触れさせ、軽く押すようにつつく。
楊ぜんが言おうとしていることを理解した太公望は、呆れたようにはぁ〜っとため息をついた。
「お主・・・・・・・・・・」
「新婚さんの常識ですよ♪さ、師叔。」
と言って、ズイっと顔を近づける。
睫毛が触れ合うほどの距離で目が合い、太公望の頬が瞬時に赤くなった。
恥じ入るように顔を伏せてしまう可愛い人。そんな様子を見つめながら、楊ぜんは
ああ、変わらないな。と心の中で小さく呟いた。
結婚したって何一つ変わらない反応を返してくれる。初々しくてしょうがない。
こんな朝のやりとりが、今まで戦いの中にいた自分達には考えられなかった。
だから余計にこんな些細な日常でも嬉しさを感じてしまう。
・・・・・・・・・こうゆうのは何て言うんだろう・・・・・・?
「!」
と・・・、ふいに髪をひっぱられ楊ぜんの考えは中断される。
それと同時に唇に温かく柔らかな感触がした。
ぱっと顔を離し、
「きょ、今日だけだからな・・・・・・・・!」
真っ赤な顔でそう言って、太公望は逃げるように楊ぜんのひざから降りようとした。
が、突然腰に回されていた腕にさらに力がこもり、ぎゅうっと力いっぱい抱きしめられた。
「ちょっ!楊ぜん・・・!?・・・・・・く、苦し・・・・・・・」
ジタバタと暴れる太公望。
しかし腕の力は弱まらない。
「楊ぜん・・・・?」
暴れても、抱きしめたまま何も言ってこない楊ぜんを不審に思い呼びかけたが
返事が返ってくる様子がない。
髪を掴みくいくいっとひっぱってみたら、さらにきつく抱きしめられた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・幸せです」
耳もとで聞こえる声。
「こんな風に朝を過ごすのが僕の夢でした。・・・・・・・・・・・幸せです師叔」
幸せ。
おはようのキス。
朝ご飯。
赤い屋根の真っ白な家。
そして、あなた。
誰にも邪魔されない二人の日常。なんの束縛もない、あるのはお互いの存在だけで。
それだけで満たされる。
太公望は抱かれる心地よさに身をまかせながら、ゆっくりと言葉を返した。
「わしも・・・・幸せだよ。こんに幸せでいいのかとゆうくらいにのぅ」
小さく自嘲気味に笑う。
封神計画で何人もの犠牲者をだしてしまったこのわしが、幸せになどなっても良いのだろうか?
というのが、その言葉の裏。
あえて口には出さなかったが、楊ぜんは違えることなくちゃんと言葉の意味を汲み取った。
「良いに決まってるじゃないですか。当たり前です。あの計画で一番の傷を負ったのは
間違いなくあなた。一番幸せにならなくてはダメなんですよ」
「ダメって・・・・お主・・・」
苦笑しながら少し身体を離し、楊ぜんの真剣な顔を見る。
「やっとあなたのこの小さな肩から責任が降りて、もう何にも縛られてはいない。
僕はようやく全て手に入れることができた・・・・・。あなたは僕のものです。僕が幸せにするんです」
まるで、子供が駄々をこねているようだ。
真面目に言っているつもりなのだろうが、そんな彼がなんだかおかしい。
けれど、その瞳が真剣そのものだということだけは見ただけでもわかった。
「お主もな。わしが幸せにしてやる」
にっと笑ってそう言えば、楊ぜんの顔は一瞬ぽかんとなりみるみるうちに喜びの色に変わっていった。
「師叔・・・・・・・・・!!」
再び腕の中に閉じこめられ、口づけられる。
思いを伝えるように何度も何度も角度を変え、長いキスは続いた。
最初はおとなしく受け入れていた太公望であったが
いつの間にか胸のあたりに這わされていた手のひらに気づき、キスの合間に抗議する。
「お・・・ぬし!朝っぱらか・・・・・ら何を・・・・・・・・・あ・・・やぁ・・」
楊ぜんの手がいいところを掠めたのか、抗議の声は甘い声にすり替わった。
自分のそんな声が恥ずかしくて、目をつむり必死に声を押し殺す太公望を
楊ぜんはやっぱり可愛いなぁ・・・・と思いながら見つめる。
勿論手は動かしたまま。
太公望はそんな楊ぜんの手の動きに必死に耐えていたが、我慢しきれず
声を漏らしてしまいそうになる。
けれどその前に、身体を這っていた手のひらは一カ所でぴたりと動きをとめてしまった。
おなかの上をそっと撫でられ、?と思った太公望はそろっと目をあけ、楊ぜんを見上げる。
「ねえ師叔。子供、欲しいと思いません?僕たちの」
楊ぜんの唐突な問いに、太公望は驚いたような呆れたような視線をむけた。
「はぁぁ??何をいっとるのだ?男同士でどう子供なんぞつくれと・・・・・・・」
「だから、僕が女性に変化するとか」
にっこり言ってくる楊ぜんとは対照的に、太公望の顔は驚き一色となる。
「お、お主・・・・・・・・・・・わしに『攻め』をやれというのか!???」
楊ぜんの服をぎゅっと掴み、本気でそんなことを言ってくる太公望に思わずぷっと吹き出す。
その後もくくくっと笑い続ける楊ぜんに、バカにされたぁ!!と分かり
顔を真っ赤にする。
「あははっ・・・・・・・もぅ、最高ですよ師叔。
もおー・・・!絶対に幸せにしますからvv信じてくださいね」
優しく微笑みながらそう言われるが、笑われたことの悔しさからぷいっと
顔をそむける。
それでも楊ぜんの表情はにこにこしたまま。
なにがそんなに楽しいのやら・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや、楽しいか。
こんな些細なことも、二人にとっては幸せで。
妙に納得した太公望は、楊ぜんのひざからすっと立ち上がるとベットから飛び降りた。
「まったく。お主のせいで本当に飯が冷めてしまったぞ。温めなおしてくる」
そう言って、扉のほうにむかい歩いていく。
しかし、ドアのノブに手をかけたところでふいに太公望の動きが止まった。
その様子に首をかしげ、楊ぜんがどうしたのかと問おうと口を開きかけた時、くるりと太公望がこちらを振り返った。
「わしは・・・・・・、今でも充分に幸せだよ」
恥ずかしそうに頬を染めながら、そう嬉しそうに言う。
「・・・・・・・・・・師叔」
言う、けど。
まだまだ全然幸せにし足りない。今まで苦しんだぶんだけにも足りていない。
あなたを幸せにしたい。
くるっと方向をかえ、ぱたぱたと部屋をあとにする小さな背中に、微笑みながら誓うように呟いた。
「もっと、もっとですよ」
明日はもっと幸せに
+END+
あとがき
1111HITリクです。
リク内容は「楊太の新婚ラブラブ」でしたが・・・・・・・・・・・・・
は?どこら辺が?みたいになってしまいました(汗)
新婚といったら朝のいちゃいちゃは欠かせないだろう!と、書き出したんですがぁ〜
なんかよく分からない方向に進んでいきやがりました・・・(死?)
良かったら、楊ぜん→教主・太公望→王天君と融合というのは無視して読んでください。
普通にダッキをたおして封神計画終了・・・・みたいな。(ここで言っても遅い)
コウキ様!リクエスト有り難うございました☆★