++好きでいてね++
なぜだか今日は太公望の様子がおかしい。 仕事をさぼったり・・・・いや、これはいつものことなのだが、今日はいつもにも増して 執務室をぬけだしているし、倉庫から桃を盗む回数も多い。
楊ぜんは、そんな太公望のちょっとした変化にも気がついていた。 だって愛しい人の変化はそれだけではなかったから。
何故だか今日は僕にだけ「おはよう」の挨拶もしてくれなかった。 何故だか今日は僕とだけ視線をあわそうとしてくれない。 何故だか今日は僕にだけ冷たい・・・・・・・・・・。 (昨日なにか師叔の気にさわることでもしたかな・・・・?) 考えたけれど思い当たることはない。
はっ!! そういえば昨夜は、軽いキスだけかわしてお互いの自室で別々に寝たっけ。 それを怒ってるんですか?そうなんですか師叔!?キスだけでは足りなかったんですねーーー!? などと不埒なことを考えながら、ばっ!と問題のその人へ視線を送る。
ここは執務室。 何時のまにかぬけだしてしまっていた太公望を、楊ぜんはさっきやっと見つけだし連れ戻してきた。 今はおとなしく仕事をしているが、またいつぬけだすか分からない。 どこかに行ってしまいいない。武王は・・・いつものことながらいない。
「あの師叔・・・・」 「なんだ」 返事はしてくれたが顔はあわせてくれない。 したがって、二人の視線もあわないまま。
はあ。とため息をついて。 「今日はいったいどうしたって言うんです?僕あなたに何かしました?」 「別に」 「別にってことないでしょう。どうして今日はそんなに冷たいんですか?!それも僕にだけ!!」 楊ぜんは恋人のそっけない態度に苛立ち、声を荒げてどなってしまった。 そして、強引に顔を上げさせ視線をあわせる。
今日初めて見せてくれた瞳はあいかわらずとてもキレイで、自分が怒っていることも忘れ思わず見とれてしまった。 そしてその瞳にすいこまれるように、愛しい人に唇を重ねようとした・・・・・・が。
「・・・・・・・・・・・師叔」
太公望は両手で自分の口を塞いでしまっていて、口づけることはかなわなかった。 はあ。と楊ぜんはもう一度ため息をつき、今度は優しく問いかける。 「本当に・・今日は」 「嫌いになったか?」 「どうしたん・・・・・・・・・・え?」 「仕事さぼるし桃は盗むし、・・・・お主にこんな事するわしなんて嫌いになったか?」
さっきの冷たい声とはうってかわって、怯えるような不安げな声。 「師叔・・・何があったんですか?ちゃんと話してください」
はじめのうちは言いにくそうにしていたが楊ぜんに、ね?と念をおされ 太公望は覚悟を決めたように口をひらいた。
「あのな・・・・昨晩夢を見たのだ。・・・・・・・・・お主に『嫌い』と言われる夢を・・・。だから怖くなってお主を試した。 お主に嫌われそうなことばっかりしても、それでもわしを好きでいてくれるか・・・、嫌いなんて言われないか試したのだ・・・・・」 そう言って、きゅっと楊ぜんに抱きつく。
そんな太公望が愛しくて楊ぜんはやわらかく微笑み、自分からもその小さな身体を抱きしめかえした。 「師叔。僕があなたを嫌いになるわけないですよ。仕事さぼったりするあなたが嫌いなら もうとっくに僕はあなたのそばにいません。・・・・・でも僕はあなたのそばにいて、あなたが好きです。 惚れた弱みですかね・・?全部許せてしまうんですよ。あっ、でも浮気なんてされたら嫌いになるかも・・・・」 「な!そんなことは絶対ない!わしは浮気なんか・・・・・・・・・・・・・あ」
思わず言ってしまった本音に太公望は照れる。 そして照れて赤く染まった頬を隠すように、楊ぜんの胸に顔をおしつけた。
「はい」 「こんなわしだけど・・・・ずっと好きでいてくれるか?」 「はい。ずっとずっと、大好きですよv・・・・師叔は?」 「・・・・・・・・・・わしも」
もう嫌な夢は見ないように
今夜は一緒に寝ましょうねv
+END+
あとがき 私はどうして誰もいない執務室が好きなんでしょう・・・・・・?(聞くな) |