++mine++
夜も遅く。太公望の自室でいまだ終わらない執務を二人で黙々とこなしていた。 と。 「あ、痛。」 太公望は目になにかが入ったのを感じ、動かしていた筆をとめ反射的にそれを閉じた。 「?どうされました師叔」 太公望の様子の変化に楊ぜんも仕事の手を休める。 「うー・・たぶん睫毛が入ったのだ。最近よくはいるからのう・・・。イタタタ・・・」 睫毛が入ってしまっている目をゴシゴシとこすり、なんとかとれないものかと奮闘する太公望。 「ダメですよ師叔・・・。あなたのきれいな瞳に傷がついてしまう」 楊ぜんは太公望の手をそっと掴み、それをやめさせる。 だけど太公望の目はちょっとこすっただけで、すでに赤くなってしまっていた。 そんな目で自分をきょとんと見てくる太公望をうさぎのようで可愛いな・・なんて 思いながら、楊ぜんは掴まえた太公望の手を引き寄せた。 「こちらへ来てください。僕がとってあげます」 「うむ・・・・」 引き寄せられるまま太公望は自分の席を立ち、そして楊ぜんのひざの上に自らよじのぼった。 「珍しいですね。あなたのほうから座ってきてくださるなんて」 そういいながらも、太公望が落ちないためと逃げられないために華奢な腰に両腕をまわす。 太公望もずり落ちないようにと楊ぜんの服をきゅっとつかむ。 「ま・・・たまにはのぅ。それより早くとってはくれんか?痛くてたまらぬ」 そしてまた赤くなってしまっている目をこすろうとする太公望を制して 楊ぜんは腰にまわしていた片方の手で太公望の顔を上むかせる。 「痛かったら言ってくださいね」 「優しくたのむぞ」
「痛くありませんか・・?」 「ん・・」 こわれものを扱うように丁寧に瞳のなかの睫毛をとる楊ぜん。 ちっとも痛くなんてない。優しすぎて心地良いくらいだ。 さらりと、柔らかい蒼髪が頬に触れたのを感じて、なにげなく・・ふっと太公望は目の前の楊ぜんの瞳に視線をやった。 自分の目のなかの睫毛をとってくれているのだから、楊ぜんが自分の瞳を見ているのは当たり前のこと。 だけど、いきなり合わさった視線に太公望は思わずドキリとした。 自分だけを見ている瞳。蒼く澄んだ瞳の中に自分がいるのがわかる。 (・・・・・きれいな目じゃのう。こんな間近で見たのは初めてじゃ・・・・) そしてしばらく、その蒼に囚われたようにみとれてしまった。
「・・・・叔・・師叔?とれましたよ?」 太公望は呼びかけられてはっと気づいた。 「・・・・・・!お、おお ありがとう楊ぜん」 「どうしたんですか?ぼーっとして」 「んー・・・べつに。ただ、お主の瞳はきれいだな・・と思って見てただけじゃ」 「見とれてくださったんですか?嬉しいです」 「・・・ばっ!みとれてなんて・・見てただけだ!!」 図星をさされ、自分の頬が熱くなってゆくのがわかる。 ホントは思いっきりみとれてたけど。 真っ赤になって慌てて言い訳する太公望に楊ぜんはクスクスと笑う。 「また睫毛が入ったら言ってくださいね。とってあげますから」 今度もまたこういう体勢でねvっといいながら睫毛を取り除いた瞳の瞼に軽くちゅっと口づけられて、 太公望はますます顔を朱に染めた。 その反応が可愛らしくて、楊ぜんはまわした腕に力を込め太公望を自分の胸に閉じこめた。
しばらくはその広い胸に全てをあずけていた太公望であったが、また、さらりと優しく 楊ぜんの蒼髪に頬を撫でられて、その蒼に先程囚われた蒼を思い出した。 「・・・・のう楊ぜん。こうやって人に睫毛をとってもらうと、その間普段は見れない 人の瞳をじっくり見れるものなのだな・・・・・」 「師叔・・・・・他の人に・・・僕以外にこんなことさせてはダメですよ?」 頬を両手で包まれ、上をむかされて。 そしてまた、自然と二人の視線は重なり合う。見つめた楊ぜんの瞳は真剣そのもので・・・。 こんなこと、楊ぜん以外にさせるはずもないのに。それくらいわかっているはずだろうに。 人の瞳といったのが悪かったのかのう? そんなやきもち焼きの恋人にふふっと微笑む。 「そうか・・・・見たくてもお主がそうさせてくれんのであったな」 「そうです。・・・僕だけ見ていればいいんですよ・・その瞳には僕だけを映して」 まだ少し赤い太公望の瞳を覗きこんで楊ぜんが言う。 視線をあわせた蒼の瞳の中にまた自分がいるのを発見して、 太公望は、その瞳がなんだか自分のもののようで嬉しくなった。 「お主以上に綺麗な瞳をもった者などおらぬと思うしな・・・・・・わしもお主しか見たくないよ・・・」 「僕だって」
誰にもあげない。
きれいなきれいな君の瞳 ぜんぶぜんぶ僕のもの
+END+
あとがき なんてゆうか・・・前の小説とかぶってます。ネタも題も(死) |