つまりはソウイウコト。




朝からなんだかそわそわして、どうも落ち着かない。

何か、何か忘れてる気がするけど。
それが何かが分からない。

取り敢えずコーヒーでも煎れて。
あ、ソファの上でゆっくりくつろいでいる人の分も忘れずに。

まあ、そのうち思い出すだろう。多分。

 

「うぅ〜・・ん」

夕方になってもやっぱり思い出せなかった。
何か、こう・・とっても単純且つ日常に欠かせないコトだったような・・・。

「お主、今日変だぞ?」

僕の隣で寝そべりながら、時々かまって欲しげに抱き付いてきていた師叔。
なんだかご機嫌が良いみたいで、めずらしく甘えてきてくれて。
だけど、さすがに一日中この調子の僕を変だと思ったのだろう。
こんな状態でなければ、このシチュエーションは僕的にかなりおいしいのだけど。
すっきりしないものが気になって、せっかくの師叔との甘い時間が台無しデス。。。

「朝から何か忘れているような気がして・・・・ずっと考えてるんですけど思い出せないんですよ」

「ふーん」

あら。そっけない返事。
考えに耽ってて、かまってあげられなかったから拗ねちゃいました?
なんだかもそもそと動いてる師叔に手を伸ばそうとしたけれど、いきなりバッと目の前に突き出されたものに動きが止まる。

「・・・・・新聞?」

「お主、今日新聞読んでなかったから、それが気になっておるのではないか?」

あ。

「・・・そういえば」

僕の朝食時の日課。
あー、なんだ。そんなことだったのか。
考えて損しました。

「でも師叔、何でそんなにすぐわかったんですか?」

僕は朝から考えて考えて、それでも思い出せなかったのに。
師叔は目をぱちくりさせて、しばし考えた後。

「お主だから?」

小首をかしげて、何故か疑問調。
自分でも何故わかったのか、わかっていないらしい。
ああ、でも師叔。その答え嬉しすぎですよ。

「師叔〜v今日はやけに嬉しいこと言ってくれるんですね。そんなに機嫌いいんですか?」

ぎゅーっと抱き締めて、今の嬉しさを表現。
抵抗らしい抵抗もなく、過ぎていった甘い時間を取り戻すようにそのまましばらく抱き合っていた。
そしてふいに、師叔の笑いを含んだ呟き。

「昼に、コーヒー煎れてくれたであろう?」

「ええ、そろそろ飲みたい時間かなと思いまして」

「わしはいつもは砂糖2個なのに、どうして今日は3個だったのだ?」

「え!いけませんでした!?なんだかお疲れのように見えたんでいつもより糖分多く欲しいかなぁと思ったんですけど・・・」

どこの誰の砂糖数の好みと間違えてるの?
そう言われているような気がして、僕は慌てて言い繕う。
だけどそれは違ったようで、師叔は慌てる僕にクスッと笑うと耳元で小さく囁いた。

「あたり」

「え?」

「お主こそ、何でわかったのだ?今日は疲れてるとか、砂糖3個欲しいかったってこと」

何でと言われましても。

多分さっき同じコトを言われた時の師叔と一緒の表情、してるんだろうな。
で、やっぱり考えついた答えも一緒。
師叔だからわかるんですよ。

機嫌のいいわけ、そういうことだったんですね。

 

「通じ合ってますね、僕たち」

「さすがわしら」

フフッと楽しげに笑い合い、顔を近づけてキスをする。

「このまま雪崩れ込んでも?」

「イヤだ」

「またまた師叔ってば、ちゃんとあなたの心伝わってきましたよ?」

「ほほぅ」

面白そうに、試すように。
僕はそれに答えてあげる。

「『ま、いっか』ってv」

「・・・・・・・あ〜・・・馬鹿馬鹿しい」

 

でもアタリ、でしょ?

 

以心伝心。

つまりは、ソウイウコト。

 

 

お互いだからわかること。
あなたでなければわからないこと。